ブレーメン音楽劇場でロングラン公演が決まった和製ミュージカル「マリー・アントワネット」の華麗な舞台が帝国劇場で演じられていて連日観客を陶酔させている。
和製と言うのは、遠藤周作原作で栗山民也演出だが、正に日本初演の素晴らしいミュージカルなのである。
一寸宝塚の舞台を思わせるようなミュージカルだが、ブレーメンのフライ氏が指摘するように、ミュージカルと言うよりもオペラ的な要素と芝居的な要素を色濃く持った音楽劇と言うことであろうか。
シルベスター・リーヴァイの音楽が甘美で親しみ易く、それに、凝った衣装とカラフルな照明、それに、回り舞台やカーテンを上手く使ったテンポの速い華麗な演出が効果的で、ドラマチックで流れるような展開が心地よい。
私のミュージカル鑑賞は、歌舞伎やオペラに比べて最近は少ないので、若い女性客の圧倒的に多い帝劇の雰囲気は場違いな感じだし、大体、役者たちの知識も殆ど皆無で、今回の舞台はぶっつけ本番で楽しんだと言うのが正直な所である。
それに、大規模な大劇場なので、スピーカーの音響がボリューム一杯なので、時には音が割れて聞き辛くなったりして、やはり、肉声主体の舞台の方が私には良い。
それでも、ミュージカル鑑賞については可なり楽しんではきている。
宝塚の舞台は、団体鑑賞で小学生の頃に経験しているし、一番最初にミュージカルを観たのは、もう30年も以上前にもなるが、ブロードウエィの「リトル・ナイト・ミュージック」で、その後、同じブロードウエィで、ユル・ブリンナーの「王様と私」やレックス・ハリソンの「マイ・フェアレイディ」等を観ている。
ロンドンに移ってからは、ウエスト・エンドやコベント・ガーデンの劇場などで「レ・ミゼラブル」「キャッツ」などは勿論、「オペラ座の怪人」は娘が好きだったのでマジェスティック・シアターに何度も通った。
残念だったのは、アスペクト・オブ・ラブ等で歌っていたのにサラ・ブライトマンを聞き逃してしまったことである。
日本に帰ってからは、「屋根の上のヴァイオリン弾き」「ラマンチャの男」をはじめスタンダードな演目は結構行っているが、バレーなどと同様に段々足が遠のいてしまった。
ところで、今回の舞台だが、タイトル・ロールの涼風真世は中々舞台栄えがして上手いと思った。
お姫様然とした若い初々しいマリーから、断頭台に向かう王妃としての品格と威厳を保ったマリーまで、声の質を微妙に変えながら上手く演じている。
涼風は、宝塚では、オスカルなど男役のトップだったようだが、声自身は美しくて心地よい声質では決してなくて、説得力のある歌唱と豊かな演技力が魅力の女優であるように思った。
もっとも、オペラでも、キャサリン・バトルやシルビア・マックネールのように素晴らしく美しい声質の有名歌手もいるが、マリア・カラスを筆頭に大歌手には美声が少ない感じでもある。
男役より女役を演じた期間が長くなったと言っているが、宝塚出身で女役に転向した女優の素晴らしさには定評があるが、昔、寿美花代が藤壺を演じた映画を見て、その瑞々しさと品のある色香に圧倒された記憶があり、大地真央の舞台なども素晴らしい。
この舞台の実際の主役は、或いは、同じイニシャルM.Aのマルグリット・アルノーかもしれない。
ダブル・キャストで、私の見たのは笹本玲奈だったが、若くてパンチの利いた素晴らしい舞台で、多少荒削りではあったが、澄んで良く通った綺麗な声で切々と歌う感じとはちきれる様な演技はマルグリットにぴったりだと思って見ていた。
まだ、舞台経験も少ない若い女優なので、思い切ってロンドンあたりに出かけてミュージカルやシェイクスピアを修行して来れば良いと思うのだが、将来が楽しみなシンガーである。
印象的な舞台をつとめたのが、マルグリットの教師で修道女アニエス・デュシャンを演じる土居裕子で、控え目ながら清楚で美しい歌唱が良く、それに、売春宿の女将ラパン夫人を演じた北村岳子のコケティッシュで迫力ある舞台も面白かった。
男優で面白いのは、やはり、ベテランの錬金術師カリオストロの山口祐一郎と作家ボーマルシェの山路和弘の練達した舞台だが、しかし、役柄がストーリーとは何の関係もない狂言回し、説明役に終わっているのでどっちつかずで消化不良である。
その点、この舞台で唯一好人物として描かれているマリー・アントワネットの愛人スエーデンの貴族アクセル・フェルセン公を演じる今拓哉の爽やかな演技が光っている。
ルイ16世の石川禅のおっとりとした国王像、革命に走る王の従兄弟のオルレアン公の鈴木綜馬の灰汁の強い革命獅子像など芸達者な役者が揃っていて楽しませてくれる。
劇場のチラシには、
世界にひびけ、この歌声―――愛こそが自由への道―
君は気付いた、人を尊ぶことに大切さ
人間なのに、愛を忘れたらどんな自由も生まれない。
と言ったサブタイトルが付いているが、何れにしろ、フランス革命の血なまぐさい革命を舞台に借りて仕立て上げたマリー・アントワネットと言う王妃の創作劇、と言う目で楽しむことである。
したがって、歴史認識(?)や思想的背景などと難しいことを言わずに、綺麗で楽しい舞台を鑑賞すること、それに、同じ時代背景を背負っているので、6月に始まる同じ帝劇の「レ・ミゼラブル」を一緒に見るともっと楽しくなるかも知れない。
和製と言うのは、遠藤周作原作で栗山民也演出だが、正に日本初演の素晴らしいミュージカルなのである。
一寸宝塚の舞台を思わせるようなミュージカルだが、ブレーメンのフライ氏が指摘するように、ミュージカルと言うよりもオペラ的な要素と芝居的な要素を色濃く持った音楽劇と言うことであろうか。
シルベスター・リーヴァイの音楽が甘美で親しみ易く、それに、凝った衣装とカラフルな照明、それに、回り舞台やカーテンを上手く使ったテンポの速い華麗な演出が効果的で、ドラマチックで流れるような展開が心地よい。
私のミュージカル鑑賞は、歌舞伎やオペラに比べて最近は少ないので、若い女性客の圧倒的に多い帝劇の雰囲気は場違いな感じだし、大体、役者たちの知識も殆ど皆無で、今回の舞台はぶっつけ本番で楽しんだと言うのが正直な所である。
それに、大規模な大劇場なので、スピーカーの音響がボリューム一杯なので、時には音が割れて聞き辛くなったりして、やはり、肉声主体の舞台の方が私には良い。
それでも、ミュージカル鑑賞については可なり楽しんではきている。
宝塚の舞台は、団体鑑賞で小学生の頃に経験しているし、一番最初にミュージカルを観たのは、もう30年も以上前にもなるが、ブロードウエィの「リトル・ナイト・ミュージック」で、その後、同じブロードウエィで、ユル・ブリンナーの「王様と私」やレックス・ハリソンの「マイ・フェアレイディ」等を観ている。
ロンドンに移ってからは、ウエスト・エンドやコベント・ガーデンの劇場などで「レ・ミゼラブル」「キャッツ」などは勿論、「オペラ座の怪人」は娘が好きだったのでマジェスティック・シアターに何度も通った。
残念だったのは、アスペクト・オブ・ラブ等で歌っていたのにサラ・ブライトマンを聞き逃してしまったことである。
日本に帰ってからは、「屋根の上のヴァイオリン弾き」「ラマンチャの男」をはじめスタンダードな演目は結構行っているが、バレーなどと同様に段々足が遠のいてしまった。
ところで、今回の舞台だが、タイトル・ロールの涼風真世は中々舞台栄えがして上手いと思った。
お姫様然とした若い初々しいマリーから、断頭台に向かう王妃としての品格と威厳を保ったマリーまで、声の質を微妙に変えながら上手く演じている。
涼風は、宝塚では、オスカルなど男役のトップだったようだが、声自身は美しくて心地よい声質では決してなくて、説得力のある歌唱と豊かな演技力が魅力の女優であるように思った。
もっとも、オペラでも、キャサリン・バトルやシルビア・マックネールのように素晴らしく美しい声質の有名歌手もいるが、マリア・カラスを筆頭に大歌手には美声が少ない感じでもある。
男役より女役を演じた期間が長くなったと言っているが、宝塚出身で女役に転向した女優の素晴らしさには定評があるが、昔、寿美花代が藤壺を演じた映画を見て、その瑞々しさと品のある色香に圧倒された記憶があり、大地真央の舞台なども素晴らしい。
この舞台の実際の主役は、或いは、同じイニシャルM.Aのマルグリット・アルノーかもしれない。
ダブル・キャストで、私の見たのは笹本玲奈だったが、若くてパンチの利いた素晴らしい舞台で、多少荒削りではあったが、澄んで良く通った綺麗な声で切々と歌う感じとはちきれる様な演技はマルグリットにぴったりだと思って見ていた。
まだ、舞台経験も少ない若い女優なので、思い切ってロンドンあたりに出かけてミュージカルやシェイクスピアを修行して来れば良いと思うのだが、将来が楽しみなシンガーである。
印象的な舞台をつとめたのが、マルグリットの教師で修道女アニエス・デュシャンを演じる土居裕子で、控え目ながら清楚で美しい歌唱が良く、それに、売春宿の女将ラパン夫人を演じた北村岳子のコケティッシュで迫力ある舞台も面白かった。
男優で面白いのは、やはり、ベテランの錬金術師カリオストロの山口祐一郎と作家ボーマルシェの山路和弘の練達した舞台だが、しかし、役柄がストーリーとは何の関係もない狂言回し、説明役に終わっているのでどっちつかずで消化不良である。
その点、この舞台で唯一好人物として描かれているマリー・アントワネットの愛人スエーデンの貴族アクセル・フェルセン公を演じる今拓哉の爽やかな演技が光っている。
ルイ16世の石川禅のおっとりとした国王像、革命に走る王の従兄弟のオルレアン公の鈴木綜馬の灰汁の強い革命獅子像など芸達者な役者が揃っていて楽しませてくれる。
劇場のチラシには、
世界にひびけ、この歌声―――愛こそが自由への道―
君は気付いた、人を尊ぶことに大切さ
人間なのに、愛を忘れたらどんな自由も生まれない。
と言ったサブタイトルが付いているが、何れにしろ、フランス革命の血なまぐさい革命を舞台に借りて仕立て上げたマリー・アントワネットと言う王妃の創作劇、と言う目で楽しむことである。
したがって、歴史認識(?)や思想的背景などと難しいことを言わずに、綺麗で楽しい舞台を鑑賞すること、それに、同じ時代背景を背負っているので、6月に始まる同じ帝劇の「レ・ミゼラブル」を一緒に見るともっと楽しくなるかも知れない。