熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

JRのエキナカ・ビジネス・・・キヨスクの閉店

2007年04月25日 | 経営・ビジネス
   NHKの日曜番組で、JR駅のキヨスク(キオスクに変更予定)が最近閉店している所が多くなったと報道していた。
   JRは、商品知識に精通していたベテランの販売員を、コスト削減のために、IT技術を導入してバーコードを読み取れば良いだけのアルバイト店員に置き換えようとした。
   ところが、景気の回復とキツイ業務に人気がなくてアルバイトが集まらず、早期希望退職で辞めさせた店員の補充が効かないので、やむを得ず閉店せざるを得ないのだと言う。

   この問題は、経済社会の急速な変化とビジネスモデルの変革を求める経営環境の激変を物語っていて、非常に示唆に富む話題を提供している。
   エキナカ・ビジネスに開眼したJRの経営戦略の推進には目を見張るべきものがあるが、商業ビジネスについては、経験が少ないので、今後更にどのような展開をして行くのかと言う視点からの、キヨスクの見直しが大切であろう。
   
   今回の問題の一つは、労働市場に対する見方である。
   まず最初に、これまでは、中年のベテラン女性がキヨスクの店員をしていて、あの僅かに一坪くらいの店内にある沢山の商品については、価格は勿論十二分に商品知識を持っていて、即座に客の要求に対応していた。
   しかし、最近のコンビにもスーパーもそうだが、価格計算についてはバーコードを機械で擦れば完結するし、Suicaを使えばもっと楽で、それにポスシステムなので、商品の補充など品揃えは自動的に行われ、殆ど苦労を要することなく素人のアルバイトでも仕事が出来るようになった。

   景気の回復で、新卒等若年労働が、既に相当前から逼迫し始めて来ており、一人勤務での結構きつい単純労働となったキヨスクに対してアルバイトが魅力を感じて転職してくると考えたJRの脳天気ぶりと言うか、時代認識の甘さなど、まだ、お役所気分の延長であろうか。
   大体、IT手法を活用して人件費の固定費から変動費への転換を企図するなら、5年以上も現実の経済社会の動きから遅れている。
   仕方なく、この口絵の求人広告のように、月給制にして契約社員を募集するようになったようだが、キヨスク単独で雇用形態を維持するのは無理であろうと思う。
   私は、エキナカ・ビジネスのスタッフとして従業員を雇用してローテーションでキヨスクを担当する方法が適当ではないかと思っている。
   このキヨスク店員が、列車案内など他のサービスを提供するなど業務範囲を拡大するならイザ知らず、バーコードをなどる程度の仕事だけなら、ビジネス論理上ワーキングプアー待遇しか与えられない筈だからである。

   ところで、話は飛ぶが、
   エキナカ・ビジネスについては、片山治著「イノベーション企業の研究」の中で、JR東日本の大塚社長が、経営戦略を交えて、その推移などを語っていて興味深い。
   民営化後、試行錯誤の努力の結果、現在では、駅を舞台にした商業など非鉄道部門の売上高が3割を占めるようになっている。
   2005年に発表した中期経営構想「ニューフロンティア2008」では、「駅と鉄道」と並列させて、駅は鉄道の一部ではなくて、駅は鉄道と同様の大きな経営資源であり、重要なビジネスの場であると言う方針を打ち出したと言うのである。

   このブログでも触れているが、民営化でJRが国鉄から引き継いだ最大の資産は、交通至便の一等地に事業所を持ち、集客する努力を一切しなくても、わんさと自分で勝手に集まってくる膨大な消費者を、一網打尽にして商売が出来るビジネス・チャンスなのである。
   正に、そのビジネス拠点が、駅なのであるから、その意味では、先の中期経営構想は的を得ているのだが、これを場所としての駅と言う捉え方をするのではなく、JRの持つ経営資源をフル活用して事業展開するためのビジネスの場として考えることが大切であろう。

   JRとして何を売り物にしてどのようなビジネスを展開すれば良いのか、鉄道産業と言う先入観を離れて、全く自由な発想で戦略・戦術を打てば、エキナカ・ビジネスなど当然に出てくる事業だが、まだまだ、もっと大きな膨大なビジネスの種とチャンスがある筈である。
   Suicaなどは、既に鉄道事業としてのJRの事業から独立して大きく飛躍しようとしているが、「JRは、元は鉄道会社であった」と言う時代もそんなに遠くないかも知れない。
   JRが民営化で得た重要な資産は、集客する努力なしに集まってくる膨大な消費者であること、そして、その資産をビジネス・チャンスとして活用出来るかどうかが、JRの経営の根幹であることを理解することが大切だと思う。
コメント
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