熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

現在のインドは10年前の中国・・・榊原英資教授

2007年09月29日 | 政治・経済・社会
   アメリカ在住印僑のハイテク・エンジニアによるIT関連業務のアウトソーシングで火の点いたインドの経済成長は、第二の転換点に差し掛かっている。
   政府の厖大なインフラ投資を先駆けとして、経済社会の発展のみならず、地方の開発と貧困層の雇用拡大のために、製造業の発展を図るべく大きく舵を切り始めたのである。
   1991年の新経済政策によってテイクオフしたインド経済は、疾風怒濤の如く経済成長を遂げた10年前の中国に良く似ている。

   そんな話から、榊原英資教授が、「21世紀の経済大国『インド』の原動力」と言う演題で某証券会社のインド投資セミナーを始めた。
   早大のインド経済研究所長になってから、何度か榊原教授のインド関連セミナーを聴講し、著書「インド 目覚めた経済大国」をも読んでいるので、殆ど教授の喋る内容は分かっているのだが、その後の推移を聴きたくて、また、セミナーに繰り出した。
   後半、ウィプロ・テクノロジーズのG・パランジブ社長の「インド成長企業の魅力」と言う演題で講演があったが、何れにしろ、アメリカからのIT関連アウトソーシングが全売上の80%もあって年率3~40%の勢いで成長していると言うのだから、BPO(Business Process Outsourcing )の威力は大したものである。

   榊原教授の話で、興味を持ったひとつは、印僑の存在とその役割である。
   これを中国の華僑と比較するとその違いが良く分かって面白い。
   華僑の場合には、有力な関係は主にアジア・コネクションだが、印僑の場合は、世界的な広がりを持っており、その多くは宗主国であったイギリスとアメリカに集中しており、現在の文明と科学、そして、政治の中枢に大きなコネクションを持っている。
   このことは、世銀や国連などの国際機関に、印僑の職員が非常に多いことや、金融やITなど欧米企業のトップにインド系が結構多いこととも相まって、今後インドが国際社会での比重が増すにつれて、インドの国際社会での影響力の強化に大いに貢献する筈である。
   しかし、これは誰も言わないけれど、影の部分だが、レバシリ、インパキと言われるくらい商売にはえげつないし、それに、アフリカ人には、自分たちの祖先を売り買いした奴隷商人としての恨みが残っている。

   もう一つ榊原教授の指摘で興味深かったのは、インド社会は、知者と知を重んじると言う点である。
   カースト制度の頂点には、バラモンと言う僧侶や教師が置かれているところが、権力者を頂点とする日本の士農工商と違う所だが、現在の親たちは子供たちをエンジニアや医者にすることを願っていると言う。
   九九は、19×19まで覚えているので、数学の教育水準は極めて高く、また、子供には徹底的に基礎教育を叩き込んでいると言う。
   私自身は、ゆとり教育などは言語道断であり、とにかく、まず知識を叩き込むことが肝心で、知識があればあるほど良く、それに、読み書きそろばんと言う日本古来の教育方針が正しいと思っているので、インド方式には賛成である。

   同じBRIC’sの国として、アメリカとの関係や発展段階の違いが面白い。
   中国とインドは、両国ともアメリカ産業のバック・ヤードだが、在外同胞人の違いと経済社会の構造の違いによって、中国は比較的程度の低い工業製品の、インドはIT,医療など知的に高度なソフト産業のアウトソーシングなりオフショアリング基地となっている。
   中国は、先進国が通ってきた発展段階を同じ様に歩いて経済成長を図って来たが、インドの場合には、一挙に知識情報化産業社会から目覚めて経済成長をスタートさせ、逆に、第一次、第二次産業に立ち戻って経済成長を加速させようとしている。
   インドにとっては、高度な科学知識を持った一握りのハイテク産業の育成は容易に出来ても、厖大な未開の貧困層を巻き込んでのインフラ整備や工業の発展拡大は非常に難しい道のりかも知れない。

   榊原教授は、インド人の多様性や、仏教・ヒンズー教の影響での無常観についても指摘していた。
   インドが、21世紀の大国として予想通りの発展を遂げて行けるのかどうかは、多くの未知数の要件があるので、手放しで楽観視は出来ないと思うが、近き将来人口世界一の国になることは間違いないので、マスとしても巨大であり目が離せないことは事実であろう。

(追記)写真は、綿の花。
   

   
コメント
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