熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

美しい佐倉城址公園の紅葉

2009年11月29日 | 花鳥風月・日本の文化風物・日本の旅紀行
   風がなく、遅い午後の淡い陽の光に誘われて、佐倉城址公園に出かけた。
   この広大な公園には、紅葉する木々はそれ程多くはないのだが、本丸入り口の空掘りの周りなどあっちこっちにもみじの巨木が植わっていて、秋が深まると一挙に色づいて華やかになる。

   私が行った時には、やはり冬で、もう既に陽が大分傾いていて、もみじに陽が当たって逆光に輝いて真っ赤に染まっている葉は多くはなかったが、陽が翳れば翳ったで、もみじの錦は別な装いを見せてくれる。
   この口絵写真は、そんな緑陰の紅葉だが、緑から黄色、そして、赤く染まったもみじが、ニシキギ、ドウダンつつじなどの紅葉植物と重なって錦を織り成す。
   もみじの観賞用銘木などはなく、殆どイロハモミジやヤマモミジのようだが、一本の木に、これらのもみじが、少しずつ彩を加えながら葉の輝きを移して行く素晴らしいグラデュエーションは、神業としか思えない。

   ヤマモミジなど葉の小さな普通のモミジは、緑色から少しずつ黄ばんで行って橙色に変わって行き、最後には鮮やかに真っ赤に染まって燃えるように美しくなる。
   しかし、湿度や温度など自然条件が揃わないと、最後の真っ赤に染まるまで、無傷のままで残る葉はそんなに多くはない。   
   今年の佐倉城址公園のモミジは、気温が高かった割には、まだ、全体に色づいては居ないのだが、かなり、鮮やかに紅葉していて非常に美しい。
   陽の良く当たるオープンな空間のモミジは、真っ赤に染まっていて、光り輝く葉を、逆光で透かして見ると、小さなパターン化した文様が空に張り付いた千代紙のように、実に優雅で素晴らしい。

   私は、小さな空間に、緑色から、黄色、橙色、赤までの色のグラデュエーションが見られるようなモミジの木を探したが、残念ながら、葉が痛んでいたりして思うように見つからず、中々シャッターチャンスを掴むのが難しい。
   昔、宇治や嵐山や大津の三井寺などで、美しい錦織のような紅葉を見た記憶があるが、中々、一本の木で、そのような美しい紅葉を見つける機会は非常に少ない。

   少し時間があったので、この城址公園にある「くらしの植物苑」で、恒例の「伝統の古典菊」展をやっており、ついでに立ち寄った。
   去年も出かけたので、同じような展示なのだが、嵯峨菊、伊勢菊、肥後菊、江戸菊と、素晴らしい鉢植えの菊が咲き乱れている姿は、やはり、秋の風物で、見ていて楽しい。
   今年は残念ながら、大掛かりな飾りつけがされている新宿御苑の菊展を見に行くのをミスってしまった。その点、ここは苑内が非常に狭いので、展示もこじんまりしていて小規模だが、夫々の花を、身近に感じながら鑑賞出来るのが良い。
   嵯峨菊など、嵯峨の天竜寺の鑑賞法を模して、縁台を設えて、上から見下ろせる気配りを見せていて面白い。

   定期的に植物鑑賞教室を開いているのであろうか、オープン・スペースの小屋がけの野外教室で、古典菊のセミナーが拓かれていて、老人たちが熱心に聞いていた。
   このくらしの植物苑は、染める、織る・漉く、食べる、治す、道具をつくる、塗る・燃やすといった生活に密着した植物を栽培し研究をしているので、夫々の植物は僅かしか植わっていないが種類が多く、季節毎に、花が咲いたり実がなったりと姿を変えていてその姿を見ているだけでも面白い。

   ここにも、イロハモミジやヤマモミジが綺麗に紅葉していて美しかったが、もう少し前なら、丁度逆光だし、外の銀杏並木をバックにして、コントラストが素晴らしかったのでないかと思った。
   ところで、他の木にイロハカエデと標記されていたので、イロハモミジとイロハカエデとどう違うのか、傍に居た園芸員の方に聞いたら同じだと言うことで、ついでに、ヤマモミジとどう違うのかと聞いたら、違うと言う人もいるが、同じだと考えて良いとの返答が返って来た。
   何となく我流で区別をつけていたのだが、もう悩まなくても良いのである。

   鬱蒼とした緑陰の小道を姥が池に下りて帰途に着いた。
   池は、びっしりと睡蓮の葉や茎が張っていて、数羽の野がもが水草を食んでいる。
   後方の水田様の畑は、綺麗に整えられて翌年の菖蒲床の準備が進められている。
   周りの小高い小山には、色々な種類の木々や潅木が植わっているのであろう。紅葉した落葉広葉樹や巨大なモミジの木などが彩を添えてパッチワークのような風情で、中々雰囲気があって良い。
   この佐倉城は、明治時代に軍隊の駐屯基地を設営するために、壊されてしまったのだが、城址にある沢山の巨大な木々は、それ以前からあった木のような気がしている。

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