熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

世界の左傾化と民主主義の退潮

2022年06月20日 | 政治・経済・社会
   今日のニューヨークタイムズの電子版には、Gustavo Petro Wins Election, Becoming Colombia’s First Leftist Leader、
   Fears of Gridlock in France After Macron Is Left With Fragmented Parliamentと報じた。
   殆どのメディアも、同様に、コロンビアとフランスの選挙で、中道や右派が敗れて、左派が勝利し躍進したというニュースを伝えている。
   南米コロンビアの大統領選の決選投票で、左派のグスタボ・ペトロ元ボゴタ市長(62)が勝利宣言した。これまで右派や中道右派が政権を担っていた保守的な同国で初の左派政権となった。
   フランス国民議会総選挙の決選投票が行われ、中道のマクロン大統領の与党連合が第1勢力を維持したが、過半数(289議席)を大きく割り込み、左派連合が第2党となり、極右「国民連合」が10倍以上増加するなど野党勢力が躍進して、2期目のマクロン政権は厳しい国政運営を迫られる。と言うのである。
   ウクライナ戦争の結果、インフレが高進して国民生活が圧迫されて、国民の不満が一気に噴出した結果だと言うことでもあるが、コロンビアの場合には、貧富の格差是正を期待する貧困層や若年層の左派への支持が広がったと言うことでもあり、根本的な政治体制の変革と言えよう。

   アメリカやカナダ、中南米の首脳が集まる米州首脳会議が、アメリカ西部カリフォルニア州のロサンゼルスで開催されたが、ホスト国アメリカが、独裁国家のキューバとベネズエラ、それにニカラグアの3か国を招待しなかったことを受けて、メキシコなどが参加を見送るなど反発も出て、アメリカの求心力の低下が指摘された。
   しかし、中南米諸国の大半は、左派政権が掌握している国家であって、秋に大統領選挙があるブラジルでも、左派のルーラ元大統領の優勢が伝えられており、かってはアメリカの庭と称されてアメリカの影響力下にあった中南米が、ほぼ完全に、民主主義自由主義に距離を置く赤ないしピンク色の国家集団に変ってしまう。
   尤も、左傾化していると言うのは、これまでの独善的独裁的色彩の強かった保守政権に反対して、弱者が頼れる政党が、左派政党ないしポピュリズム政党しかなかったと言うことで、主義信条とは異なった次元の問題でもある。

   前世紀から今世紀に掛けて、世界の政治経済社会体制の大きな変化は、欧米先進国流の自由主義的な民主主義の大きな後退である。
   その一方で、中国やロシアと言った国家資本主義的な専制国家体制なり左傾化した国家体制の国家の勢力が、急進している。
   世界の国家地図が、年々、自由主義国家体制の国が減少して、専制主義的な国家体制の国に蚕食されていると言うのである。
   これなどの現象は、ウクライナ戦争のロシアに対する国連の制裁決議において、アフリカや中東など多くの諸国が、アメリカに同調しなかったことで如実に示されている。

   これは、ICT革命とグローバリゼーションの進展によって、経済成長に対するメカニズムが大きく変ってしまったことによる。
   今や、新興国や発展途上国など遅れた国は、前世紀のロストウ流の余剰敷金を蓄積して経済をテイクオフすると言った成長段階をスキップして、国家資本主義的な計画経済手法によって、最先端の技術やノウハウを導入駆使して、経済と国家の発展を策することができるようになったのである。

   グローバル経済の拡大によって拡散した資本主義体制は、いずれの政治体制であろうとも、変形しつつも機能しているが、
   自由で平等を旨とする民主主義体制は、欧米日の成熟した先進国の政治経済社会の国家にしか、有効に機能しないと言う現状になってしまった感がある。
   尤も、先のブレクジットやトランプの登場、今回のフランスの総選挙の結果などのように、先進国と雖も、一寸した弾みに、大きなブレを生じるひ弱な花でもある。
   after democracy, post democracyと言うか、脱民主主義時代を想定しなければならなくなったのであろうか、
   危惧し始めている。

   
   さて、日本だが、参議院議員選挙が近づいている。
   年金が減額されたにも拘わらず、物価が異常に上昇し始めた。
   Japan as No.1は、ずっと昔、夢の夢の世界だったが、
   30年間経済成長に見放されて、欧米先進国でも最も貧しい国に落ちぶれてしまい、経済格差が拡大し、貧困児童が激増していると言う。
   それでも、日本国民は、耐え忍んでいるのかどうかは分からないが、声も出さずに、良く分からない新しい資本主義を信じてか、内閣支持率は60%だという不思議な国日本。

   ウクライナ戦争の勃発で一気に世界中が焦臭くなって、この戦争状態が永続するという。
   国際情勢が風雲急を告げ、原爆保有国に囲まれて、我が命運を問われているにも拘わらず、日本国を如何に守るのか、戯言ばかりを繰り返す野党の公約を見ておれば、悲しいかな、日本は左傾化の片鱗さえも見出し得ない。
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