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日経が、17日夕刊で、「トランプ氏、中東の米軍削減か」と次のように報じた。
複数の米メディアは16日、トランプ大統領がアフガニスタンとイラク駐留米軍を削減する方針だと報じた。週内にも正式な命令を出し、2021年1月15日までに完了するという。再選に向けた展望が描けないトランプ氏が政権公約の実現を急げば、中東に力の空白を生みかねない。
丁度、「ボルトン回顧録 トランプ大統領との453日」を読んでいて、その辺りのことが書かれているので、ボルトンなら、このトランプの決断を、どう見るのか、興味を感じた。
中東について主に触れているのは、第6章の「シリアとアフガニスタン」、第13章の「アフガニスタンの対テロ作戦から、・・・」、
第13章の冒頭で、アフガニスタンで何を目指すかについて、ボルトンたちは、次のように考えていた。
1.ISとアルカイダの復活の可能性と、それに伴う米国へのテロ攻撃の脅威を阻止すること
2.西のイランと東のパキスタンにおける」各計画に絶えず目を光らせること
しかし、トランプもポンペオも、米軍の駐留ゼロに向けて交渉しようとしていたのだが、その協定の条件ベースは、
1.アフガニスタンでテロ活動が発生していないこと 2.ISおよびアルカイダによる活動拠点の構築を封じ込めていること 3.米国側が適切な検証手段を有していること と言う3条件が揃って初めて米軍が撤退させると言うことである。
ボルトンは、トランプたちの政策は明らかに悪手だと考えており、これは、感動すら覚えるほどの純真さで、良心のない悪党の集団と協定を結んでおいて、相手がご親切にもそれを守ってくれると信じ込むとは結構なことだと揶揄している。
トランプに従って、ポンペオもエスパーも右へ倣えであったが、ボルトンは、合意に署名するかと訊かれて、タリバンが合意など遵守するはずがないので、もし、トランプが望むのなら、駐留軍を8600人(プラス関連人員と多国籍軍)まで縮小した後、そこでストップして、アフガニスタンの選挙など更なる展開を待つべきだと答えたという。
ところが、その後、ボルトンが政権から離れた後、20年の2月に、米国はタリバンと、当時とほとんで同じ条件で協定を締結した。
前年10月のシリア撤退と相まって、アフガニスタン問題を取り巻く政治的反発は益々高まっていった。
ボルトンは、このタリバンとの合意締結は、アメリカ一般国民にとって許容しがたいリスクとなると考えて、「タリバンを正当化すればISやアルカイダといったテロ集団、さらにはアメリカの敵全般に広く誤ったメッセージを発するすることになる」と反対意見をツィートしたという。
このアルカイダとの協定合意のシリア撤退も、完全にトランプの独断だと糾弾しており、今回の中東の米軍削減にも反対するであろう。
トランプの頭には、米軍駐留は、「集団防衛」や「相互安全保障」など、複雑な國際事情のためではなく、ドイツであれ日本であれ、どこであれ、アメリカが守ってやっているのだから、相手国はその対価を払うべきだ。少なくとも、駐留先との協力協定を更新する際に、もっとマシな交渉戦略を立ててから協議すべきで、コストプラス50%を要求して、支払いを拒否すれば、米軍を撤退させると脅しあげれば良い。米国は儲ける必要がある。と言うことしかない。
ボルトンは、ニューヨークの不動産取引とわけが違う、と揶揄する。
目先だけの姑息な「アメリカ・ファースト」に凝り固まったトランプには、アメリカが世界中に張り巡らしてグローバルベースで、世界の平和と安寧を維持しようとしてきた貴重な公共財を叩き潰すことが、如何に、アメリカの国益にも、「MAKE AMERICA GREAT AGAIN」にも反した稚拙な論理かと言うことが、悲しいかな、分らないところが悲劇である。
ボルトンの超保守的なネオコン思想には、中々ついて行けないが、アメリカの中東からの撤退は、時期尚早だという考え方には、現実を考えると一理あると思っている。
(追記)バイデン政権になると、アメリカの中東政策がどう変るか、興味あるところだが、NYTが、次のようなタイトルを報じた。
Can America Restore the Rule of Law Without Prosecuting Trump? (アメリカは、トランプを起訴せずに、法のルールを回復できるのか)
From the magazine: When Donald Trump leaves office, his possible criminal liability will create a major dilemma.(トランプが職を去る時、彼のあり得る犯罪の責任が主要なジレンマを引き起こす)
普通の人間になって大統領特権を失ったトランプはどうなるのか、また、7100万票を確保してトランプ党に変貌してしまった共和党が、どのように民主党政権に対峙するのか、アメリカの民主主義が問われることになろう。
これだけ強固に保守主義に凝り固まって妥協の余地のない保守党に、バイデン民主党政権がいくら理想を掲げて奮闘努力して協調を試みても、水と油で妥協の余地のない政治経済社会の分断の修復は、一政権や二政権では無理であろうと思われる。
もう一つ私が恐れるのは、
ロイターやホーブスが報じる「米共和党の支持者、半数超が「選挙はトランプが勝利」との見方」
米大統領選の結果について、共和党支持者の半分以上(52%)が、ドナルド・トランプ大統領が「正当に勝利した」と考えていることが分かった。また、68%は選挙結果が「不正に操作された」可能性があるとみている。
と言う信じられないようなアメリカ国民の民度、知性教養の程度である。
トランプが部屋に3台のテレビを置いて、つけっぱなしにして見ていたと言う大衆放送のトランプ応援団のFOXテレビさえ、トランプを見限りつつあると言うのだが、さて、それでは、彼らを教宣するのは、生まれて人気上昇中というトランプヨイショのテレビなのか、トランプが立ち上げようとしているというテレビなのであろうか。
複数の米メディアは16日、トランプ大統領がアフガニスタンとイラク駐留米軍を削減する方針だと報じた。週内にも正式な命令を出し、2021年1月15日までに完了するという。再選に向けた展望が描けないトランプ氏が政権公約の実現を急げば、中東に力の空白を生みかねない。
丁度、「ボルトン回顧録 トランプ大統領との453日」を読んでいて、その辺りのことが書かれているので、ボルトンなら、このトランプの決断を、どう見るのか、興味を感じた。
中東について主に触れているのは、第6章の「シリアとアフガニスタン」、第13章の「アフガニスタンの対テロ作戦から、・・・」、
第13章の冒頭で、アフガニスタンで何を目指すかについて、ボルトンたちは、次のように考えていた。
1.ISとアルカイダの復活の可能性と、それに伴う米国へのテロ攻撃の脅威を阻止すること
2.西のイランと東のパキスタンにおける」各計画に絶えず目を光らせること
しかし、トランプもポンペオも、米軍の駐留ゼロに向けて交渉しようとしていたのだが、その協定の条件ベースは、
1.アフガニスタンでテロ活動が発生していないこと 2.ISおよびアルカイダによる活動拠点の構築を封じ込めていること 3.米国側が適切な検証手段を有していること と言う3条件が揃って初めて米軍が撤退させると言うことである。
ボルトンは、トランプたちの政策は明らかに悪手だと考えており、これは、感動すら覚えるほどの純真さで、良心のない悪党の集団と協定を結んでおいて、相手がご親切にもそれを守ってくれると信じ込むとは結構なことだと揶揄している。
トランプに従って、ポンペオもエスパーも右へ倣えであったが、ボルトンは、合意に署名するかと訊かれて、タリバンが合意など遵守するはずがないので、もし、トランプが望むのなら、駐留軍を8600人(プラス関連人員と多国籍軍)まで縮小した後、そこでストップして、アフガニスタンの選挙など更なる展開を待つべきだと答えたという。
ところが、その後、ボルトンが政権から離れた後、20年の2月に、米国はタリバンと、当時とほとんで同じ条件で協定を締結した。
前年10月のシリア撤退と相まって、アフガニスタン問題を取り巻く政治的反発は益々高まっていった。
ボルトンは、このタリバンとの合意締結は、アメリカ一般国民にとって許容しがたいリスクとなると考えて、「タリバンを正当化すればISやアルカイダといったテロ集団、さらにはアメリカの敵全般に広く誤ったメッセージを発するすることになる」と反対意見をツィートしたという。
このアルカイダとの協定合意のシリア撤退も、完全にトランプの独断だと糾弾しており、今回の中東の米軍削減にも反対するであろう。
トランプの頭には、米軍駐留は、「集団防衛」や「相互安全保障」など、複雑な國際事情のためではなく、ドイツであれ日本であれ、どこであれ、アメリカが守ってやっているのだから、相手国はその対価を払うべきだ。少なくとも、駐留先との協力協定を更新する際に、もっとマシな交渉戦略を立ててから協議すべきで、コストプラス50%を要求して、支払いを拒否すれば、米軍を撤退させると脅しあげれば良い。米国は儲ける必要がある。と言うことしかない。
ボルトンは、ニューヨークの不動産取引とわけが違う、と揶揄する。
目先だけの姑息な「アメリカ・ファースト」に凝り固まったトランプには、アメリカが世界中に張り巡らしてグローバルベースで、世界の平和と安寧を維持しようとしてきた貴重な公共財を叩き潰すことが、如何に、アメリカの国益にも、「MAKE AMERICA GREAT AGAIN」にも反した稚拙な論理かと言うことが、悲しいかな、分らないところが悲劇である。
ボルトンの超保守的なネオコン思想には、中々ついて行けないが、アメリカの中東からの撤退は、時期尚早だという考え方には、現実を考えると一理あると思っている。
(追記)バイデン政権になると、アメリカの中東政策がどう変るか、興味あるところだが、NYTが、次のようなタイトルを報じた。
Can America Restore the Rule of Law Without Prosecuting Trump? (アメリカは、トランプを起訴せずに、法のルールを回復できるのか)
From the magazine: When Donald Trump leaves office, his possible criminal liability will create a major dilemma.(トランプが職を去る時、彼のあり得る犯罪の責任が主要なジレンマを引き起こす)
普通の人間になって大統領特権を失ったトランプはどうなるのか、また、7100万票を確保してトランプ党に変貌してしまった共和党が、どのように民主党政権に対峙するのか、アメリカの民主主義が問われることになろう。
これだけ強固に保守主義に凝り固まって妥協の余地のない保守党に、バイデン民主党政権がいくら理想を掲げて奮闘努力して協調を試みても、水と油で妥協の余地のない政治経済社会の分断の修復は、一政権や二政権では無理であろうと思われる。
もう一つ私が恐れるのは、
ロイターやホーブスが報じる「米共和党の支持者、半数超が「選挙はトランプが勝利」との見方」
米大統領選の結果について、共和党支持者の半分以上(52%)が、ドナルド・トランプ大統領が「正当に勝利した」と考えていることが分かった。また、68%は選挙結果が「不正に操作された」可能性があるとみている。
と言う信じられないようなアメリカ国民の民度、知性教養の程度である。
トランプが部屋に3台のテレビを置いて、つけっぱなしにして見ていたと言う大衆放送のトランプ応援団のFOXテレビさえ、トランプを見限りつつあると言うのだが、さて、それでは、彼らを教宣するのは、生まれて人気上昇中というトランプヨイショのテレビなのか、トランプが立ち上げようとしているというテレビなのであろうか。