人権尊重教育 さっそくの成果

「おっ!こっちにおいでよ!」
「ほら、ここに座っていいよ!」
「いっしょに給食を食べようよ。」

今日の給食前に、温かな言葉が教室内を駆けめぐりました。
1週間前に急きょ行った「人権尊重教育」の内容を子ども達が真剣に考えてくれたことを証明する姿に、私は一人静かに心を躍らせていました。



私の学級には週に1回、特別支援学級の子ども達が給食の時に交流に来ています。
以下は先週の木曜日にあった話です。

先週、それまでいつもの交流給食ならば、
「ここの班に入れてもらいなさい。」
と私が座る席を指示していたことをやめて、特別支援学級の子たちに、
「どこでもいいから好きな場所に“入れて”って言ってみてね。」
と座る席を任せてみました。当然、その子たちは困った表情をするわけです。井上の期待するところは、私の学級の子ども達の中から、
「こっちにおいでよ。」
という声がかかるといいなぁというところにあったんですね。

ところが残念ながらというか、まあ半分は予想通りというか、学級の子ども達の反応はあまり温かいものではありませんでした。

そんなことで、急きょ5校時の授業を変更して道徳に切り換え、「人権尊重教育」を行いました。


その授業では、「心根」という言葉をテーマにして話を進めました。
その骨子だけ書き留めておきます。

人間の心は様々な思いが動いていくが、その根っこの部分に何があるかで「神様」にも「悪魔」にもなる。今回の交流給食の場面では、自分達の「心根」には何があっただろうか?

「差別」の心がなかっただろうか?

人類は過去にあまりにも残酷な「差別」を行ってきた歴史がある。例えば、第二次世界大戦の時にドイツに現れたヒトラーという人は、「我々の民族だけが最も優れている。」と言って、自分の国だけが良くなるようにと考えた。逆にユダヤ人に対しては徹底的に迫害して、何百万人もの人たちを虐殺した。

この人物の「心の根っこ」にはいったい何があったのだろうか?

それは「差別」という根っこである。
自分達だけが優れている。他の民族はダメな民族だからいなくなってもいい。そうした「差別の心根」が人の命を奪っても何も感じない心を作ってしまう。

振り返って、自分達の心根には何があったのだろうか?
特別支援学級の子だから自分達と違うという気持ちがなかったのか?
(深く考える子ども達の姿。)

相手の立場になって考えれば、いかに頑張って交流に来ているかが想像できるはずだ。彼らはどちらかというと弱い立場の人だ。それなのに、25人もいる自分の学級ではない教室に来て、給食をいっしょに食べようとしている。もし、自分がたった一人で中学3年生の教室に行って、給食を食べろと言われたら、どんな気持ちがするだろうか?
緊張もするだろうし、おしゃべりもできなくなるんじゃないのか?
普段通りにはけっしてできないはずだ。

そういうことを想像できたら、特別支援学級から交流に来るということだけで、どれほど頑張って来ているかが理解できるはず。


もうひとつ、ハンディキャップのある子たちは、はたしてそれを願って生まれてきたのだろうか? そうではないはずだ。できることならば、普通学級の子たちと同じように勉強したいし、運動したいし、遊びたいはず。そのことだけでも、普通学級にいる君たちの想像もできないような悲しみや苦しみを味わっている可能性がある。そういう人たちに、温かい手を差し伸べられないようならば、その人の「心根」は腐っているんじゃないか?


「心根」に差別の意識がある人間からは、どんどん人が離れていく。
「心根」が温かく、公平で、平等で、分け隔て無い人間には、自然に人が集まっていく。
実は、人間にはこの二つの道しかない。どちらの道に進むかは自分で決めることだから、よく考えて進むべき道を選ぶように。


こうした内容の授業を1時間行いました。



翌日の朝、保護者有志の方による「本の読み聞かせ」が10分ほどありました。
なんとタイミングの良いことか!「マザー・テレサ」の伝記を読んで下さいました。

この本の中には、ストリートチルドレンに対して分け隔て無く接し、無私無欲で子ども達を救おうと行動しているマザーの姿が描かれていました。その平等愛の行動に心を打たれて、全世界の人たちが協力をしていくのです。

「心根」の勝利です。

前日に私が言った通り、「心根」が温かく、公平で、平等で、分け隔て無い人間には、自然に心ある人たちが集まっていったのです。


あまりにもタイミング良く、マザーのことを紹介してくださったことに感激し、6年担任の二人は、自らのインド訪問の体験談を子ども達に熱く語っていました。




こうした一連の指導をしっかり心根に刻んで行動を起こしてくれた6年生の子ども達。私はまたまた名作の絵画よりも美しい「子どもの心の宝」を見させてもらいました。

そうです!
心根の部分に、キラキラ輝くダイヤモンドのような宝石を発見できたのです。
お金では絶対に買えない宝物です。



【井上のインド訪問に関する記事はこちら】
半分教師 第40話 「インド青年文化訪問団 その1」
半分教師 第41話 「インド青年文化訪問団2 友誼の外交」
半分教師 第42話 「インド青年文化訪問団3 ネルー首相の墓への献花」
半分教師 第43話 「インド青年文化訪問団4 歌は国境を越えて」
半分教師 第45話 「インド青年文化訪問団5 スプリングデールズ学園」
半分教師 第46話 「インド青年文化訪問団6 ラビンドラバラティ大学」

マザー・テレサ (おもしろくてやくにたつ子どもの伝記 (2))
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