「7つの習慣」を井上学級に当てはめると

今週号の「週刊ダイヤモンド」ではスティーブン・R・コビーの「7つの習慣」を特集しています。690円とお安い買い物ですから、大人の皆様方にはちょっとだけお小遣いをこちらに向けて情報をつかむことをお勧めします。


この「7つの習慣」は、私が学級を前進させる時に使っている習慣づけでもあります。今日は週刊ダイヤモンド記事の一部をコピーさせていただき、学校の教員全員に配らせていただきました。真っ先に目をつけてくれたのが校長先生でした。そうです。「7つの習慣」は会社経営だけでなく、学校経営をする立場の方には必読書だと私は思うのです。こんなに有名な本を読んでいないのに、有能な経営者にはなれないはずです。その意味において、即座に反応された我が校長先生は流石だと部下である私は判断したりします。


それでは私がどのように「7つの習慣」を取り入れているのかを紹介します。


(1)主体性を発揮する

 問題を人の責任に転嫁することは簡単です。しかしそれでは問題はけっして解決しません。「時代が悪いから」「教育制度が悪いから」「地域が」「親が」「職場が」云々と自分の外に責任を回避する生き方に、主体性のかけらもありません。
 私は22歳の新任教師の頃から自分に果たしてきた責任感ワードがあります。

『管理職以上の責任感を持って学級経営に当たる』

そんなことは難しいことなのですが、意識しているかいないかで大きな差が出ます。

 子どもたちにも「人のせいにしない」という習慣づけを徹底的に行っているつもりです。



(2)目的を持って始める

 これまで私が仕えた校長先生の中で、私の学級経営を冷静に見抜いてくれる方には必ず言われた言葉があります。

『井上学級の子どもたちは常に目標を意識して行動しているから伸びる』

この言葉を投げかけてもらえた時こそ、我が意を得たり。この校長先生は私のやっていることをしっかり管理して下さっていると嬉しく感じます。
昨年の6年生の合言葉は『史上最高の卒業式を行う』でした。このミッションに向かって、1人ももれなく、しかも保護者の皆様も一緒に、同じ意識に立ちながら前進しました。そうなれば当然、劇的な大逆転ドラマが生まれるに決まっています。
今の4年生も同じです。4年生の子どもたちは、自分たちでミッションを決めました。

『宇宙一のクラスになる!』

この大きな目的に向けて着々と前進しているわけです。


(3)重要事項を優先する

現在の4年生井上学級では、「マイ新聞」という日記新聞に取り組んでいます。学級の目標は1年間で合計10000号を書くということ。子どもたちも日々意識しています。この習慣については、塾の先生の私への評価を紹介していきましょう。

多くの先生は、日記や作文を書かせると、ていねいに誤字脱字、文章の修正を赤ペンで指導することでしょう。しかし、私はそういうことに目をつぶって、あえて指導しません。理由はただひとつ。文章の細かいところに目を向けて修正をさせると、子どもたちのモチベーションが下がり、作文嫌いな子になる可能性が高まるというリスクです。

今の重要事項は何なのかというと、きれいに書くことではなく、『書くことに対する抵抗感をなくす』ということなのです。さらに一歩進めて、『書くことが楽しい!』と思えるようにするということです。

塾の先生はこのように言っていたと耳にしました。

『担任の先生は、最初は小さいことに目をつぶって、書く楽しさを味わえるようにしているんですね。素晴らしい指導です。』

この「楽しむ段階」を十分に耕してから、次の細かい指導の段階に入っていきます。


(4)WIN-WINを考える

「WIN-WIN」どころか、私は昨年の6年生の保護者会でも、今年の4年生の保護者会でもこう話させていただきました。『WIN-WIN-WINの関係が大事です。』と。
子ども-保護者-教員が『WIN-WIN-WIN』の関係になって、『三位一体』の姿を周囲の人たちに感じさせることができたら、100%子どもたちは良くなります。


(5)理解してから理解される

 これは学級経営の王道ですね。
 児童理解、児童を取り巻く環境の理解。これを抜きにして指導することはできません。1年間の前半、とくに最初の3日間、子どもたちのことを理解するために、たくさんの働きかけをしていきます。
 また、子どもたち同士でも理解してから理解されるようにするために、「学び合う」、自分でつかんだ知識を惜しげもなく「教え合う」ということに、大きな価値観を持てるように指導しています。


(6)相乗効果を発揮する

「競争原理を教育には用いてはいけない」という考え方があります。私はこれに反対です。健全な競争原理と、誤った競争原理があり、健全な競争原理を経営には用いるべきだと思っています。
健全な競争原理を分かりやすい言葉で表現すると、『良きライバル』ということになります。『良きライバル』がいるかどうかで、子どもたちの能力は大きく変わってきます。その関係が相乗効果を生み出します。
現4年生井上学級も、多くの子が『良きライバル意識』を持って勉強しています。


(7)刃を研ぐ

『7つの習慣』によれば、刃を研ぐために必要な項目は次の通りです。
①社会・情緒(家族活動・会話・お付き合い)
②肉体(運動・バランスのとれた食事・ストレスマネージメント)
③精神(奉仕・芸術・鑑賞など)
④知性(読書、執筆、学習、研究など)

毎日の授業の中で、刃を研ぐような努力をするように求めているのが私です。そこで最も必要になってくるのが「モチベーション」だと感じています。その一例をあげます。

私が新任教師の頃、肢体不自由児養護学校に勤めていました。
受け持たせていただいた子どもの中で、体を動かせる子どもたちを「東京都障害者スポーツ大会」に出すことにしました。その一人が「電動車いすスラローム」という種目で金メダルを取ることができました。彼女のモチベーションはその後長く続き、15年間も連続で金メダルを守り続け、最近競技を引退したそうです。


先にあげた4つの項目を我がクラスに当てはめますとこうなります。
①学び合うという価値観を育むことによって、男女分け隔てない会話やお付き合いが生まれる。
②目標を持った体育授業を行うことで自己鍛錬をするように仕向ける。給食指導(食育)をきちんとする。
③言われなくても奉仕をすることは、巡り巡って自分のためになることを教える。授業に芸術性を盛り込んでいく。たとえばマインドマップをかくことは、自分の中に眠っていた芸術性を引き出すことにもつながる。
④学級を「学ぶ集団」に変えていく。学校は学習の場なので、当然「知性」の項目は日常的に研ぎすまされている。


(8)自己の内なる声を聞いて行動する

「何のために」が指導のキーワードになっている。何のために学ぶのか、何のために協力するのか、何のために生きるのか。こうしたことを何かあるたびに考えさせる。この項目については書き始めると長くなるので簡単に書いておきました。


【参考文献】

7つの習慣―成功には原則があった!
スティーブン・R. コヴィー,ジェームス スキナー
キングベアー出版

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第8の習慣 「効果」から「偉大」へ
スティーブン・R・コヴィー
キングベアー出版

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