地味鉄庵

鉄道趣味の果てしなく深い森の中にひっそりと (?) 佇む庵のようなブログです。

雨の近江訪問記 (4) レールバスLE10形

2007-12-20 08:06:46 | 保存・園内・特殊車両


 近江鉄道ミュージアムの展示車両はどれも個人的にツボ揃いであることは言うまでもないのですが、とくに「これを保存対象に選んだのは何ともシブく、鉄道史的にみても貴重な選択だな〜」と思ったのが、レールバス・LE10形の存在です。何と言ってもこの車両……赤字ローカル線再生のため、1980年代に富士重工が提案し、またたく間に全国各地に勢力を広げていったレールバス・LE-Carの中でも最初期のタイプに当たります。基本的にLE-Carの多くは、当時の一般的な観光バスタイプの車両 (バスのことについては詳しくは存じません ^^;) と同じような窓を採用していますが、近江のLE10と、名鉄が八百津線etc.用に導入したキハ10 (後にくりはら田園鉄道) につきましては、富士重工が最初に公開した見本車両と同じような二段窓を導入している点で、非常に貴重であるだけでなく、なかなか良い感じだなぁ〜という気がしています (^^)。



 RP誌2000年5月増刊号(関西地方のローカル私鉄特集)によりますと、長らく電車を走らせていた近江鉄道が1986年に突如LE-Carを導入したことの背景には、いくつかの美味しい利点があったようです。まず、当時電車には冷房がなかった中、冷房装備で一気にサービスを図れること、次いで導入コストが電車の1/5で済むこと、そして何と言っても閑散時に無駄なくローカル輸送をこなせること……が大きかったとか。それに加えて、近江鉄道は貨物用のスイッチャーを保有しており、運行・メンテナンス技術面でのハードルも低かったようです。
 しかし、LE-Carが投入された八日市=貴生川間を利用されたことがある方でしたら即座にお分かり頂ける通り……この区間は意外と客が多く、朝夕はLE10を2連としても相当ツライという現実がありました。そこで、より適正な大きさの車体を持った220形の登場と入れ替わりで、早くも1991年にはLE10の離脱が生じ、近江での活躍は10年間で幕を閉じてしまったとか。それでも、「彦根廃車体魔境」に長年放置されたことがかえって今や貴重なものになった初期LE-Carの「再発見」にもつながり (?) 目出度くミュージアムでの展示と相成ったというわけですから、世の中何がどうなるかさっぱり分かりません (^^;)。
 個人的なLE10との付き合いは……もちろん、半鋼製電車に狂っていた当時だけに、全くございません (^^;;)。ホントにただただ、そんな浅薄さを恥ずかしく思いつつ、早くも鉄道遺産の仲間入りを果たしたLE-Carをしみじみと眺めるのみです。