緑の谷間に住宅が立て込む横須賀らしい風景ともお別れ。紫陽花が見送り……。
別の快特が直前を先行するにもかかわらず、本領発揮の猛スピードで通過……。
三浦海岸に留置中(黄線の内側から手を差し上げノーファインダー撮影)。
津久井浜にて。嗚呼……この完成された古典的京急スタイルは永遠に不滅です!
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1959年に京急が高性能通勤電車の決定版として世に送り出した800形(初代)改め1000形は、かれこれ51年の永きにわたって京急の王者・最大勢力として堂々君臨し、普通車から快特までオールマイティーな活躍を続けて来ました。しかし、片開き扉の抵抗制御車がVVVF車と比べて性能面で見劣りすることは最早否定しようがなく、新1000形の登場以来目に見えてその数を減らし、2005年には分散冷房車が消滅、そして集中冷房車も周知の通り明日限りの運命となり、本日ついに「ありがとう運転」が金沢文庫~三浦海岸間にて行われました……。
数日前に「ありがとう運転」の内容が明らかになった際、個人的には「名車の引退にしては運転距離が短すぎ、本数も少なすぎる……これでは『鉄』や家族連れが集中し過ぎて大変なことになるのではないか? これでは到底落ち着いて最後の別れの時を味わうことは出来ないのではないか?」と思い、大師線で静かにまったりと乗車・撮影を楽しんだことを以て満足するべきではないかと逡巡したのですが、まさに1000形最盛期を強烈に思い出させる快特・特急サボつき8連が走るということで、激しく心を揺さぶられました……。それはまさに、私が杉田に住んでいた小学校低学年の頃、杉田のスロープを猛然と駆け上がって行くのを眺めた1000形A快特・H特急と全く同じ姿……。やはりここは、たとえ杉田を通過することはないとは言え、是非記録に残さなければ後悔することになるだろうと思いまして、何事も早め早めの場所取り行動に努めつつ沿線を訪れてみました。そして、永年にわたって品川~横浜→横須賀間を猛然と突っ走ってきた1000形が降らせた涙雨でしょうか、待ち時間には時折叩きつけるような風雨に見舞われましたが、幸いにして通過時には明るさを確保出来、梅雨に濡れた緑の三浦半島らしい風景の中を駆ける1000形の最後の勇姿を思い通りに描ききることが出来ました……。
嗚呼……大きな窓で優雅なスタイル、そして如何にも頑丈そうな下回りを持ち味とする1000形は、伝統の快特・特急サボも誇らしく、これほど美しく輝き堂々と走ることが出来るのに、何故もう引退なのでしょうか……。いや、約半世紀前の時点でこの基本的デザイン・性能が完成されたことこそむしろ今改めて驚くべきことであり、「何故もう引退」としか思えないこと自体、まさに日本の高度成長の精華を集めた通勤電車として一世を風靡した1000形が名車の中の名車であることの裏返しなのかも知れません。かつて1000形の黄金時代、快速特急に600形 (初代) が現れず1000形での運行であったり (2000形の登場まではそれが当たり前でした)、H特急に非冷房1000形がやってきたりすると、それこそ子供心にブーイングものでしたが、そんな過去の自分の偏見は全て誤りであったと心から懺悔しつつ、京急の歴史の非常に大きな部分を彩った1000形の勇退を痛切に惜しみ、長年の大活躍に最大級の拍手を送ります……。そして、最後に素晴らしい「ありがとう運転」を実現して下さった関係者の皆様のご尽力に、この場ながら心よりお礼申し上げます。
京急電車の中の京急電車、1000形の真紅の輝きよ、永遠なれ!!!!
側面窓に 快 速 特 急 表示!!
やっぱり誰が何と言おうと、正式名称は快特ではなく快速特急でしょう! (爆)
こんなところにも京急関係者の方々の熱い思い入れを見て取れます……。