神戸電鉄粟生線の経営状況が思わしくないという問題がある兵庫県でもう一ヵ所、鉄路の命運が非常に危ぶまれる事態が生じているようです。最近関西ローカルの報道をきっかけにちらほらとネット上にて語られているところによりますと、北近畿タンゴ鉄道の長大な路線のうち、京都と兵庫の府県境にかかり、かつ人口密度の低さや舞鶴・福知山など主要都市への遠さゆえに利用客がもともと多くない区間について、最大出資者の京都府が兵庫県に対して廃止を含めた打診中とか……。
そこで地図を紐解いてみますと、北近畿タンゴ鉄道のうち兵庫県にかかる部分は豊岡に近い末端のみですが、この区間の存在によって北丹から山陰線豊岡以西へのアプローチが保たれ、観光客のヨコの移動が容易になっているという特徴があります。もちろん、地元の人々の豊岡への足としてもそれなりに機能しているのでしょう。しかし、もともと利用客の絶対数が多いとは思えないところに、2008年以後景気の悪化、そしてとどめとして高速無料化による利用客の激減という荒波が襲いかかり、県境越え区間の維持が非常に重荷になっていることが想像されます。京都から丹後方面へのかなり長距離にわたる高速道路無料化は、J民党の大物N議員の地盤である京都に照準を合わせていることが傍目にも明らかで、そんな露骨な集票策が北近畿タンゴ鉄道直通特急の利用客急減をきたしているという……。
周知の通り、来る3月の改正でタンゴ・エクスプローラーの大阪直通が廃止されることになっており、既に1月下旬発売の時刻表にて線内特急の増加が明らかになっていますが、これも恐らくエクスプローラーの経年劣化を修繕や代替新造で補って大阪直通を維持する費用を賄えなくなってしまったためでしょう (とくに、287系の導入により今後予定される福知山線特急のスピードアップにエクスプローラーを対応させるのを諦めざるを得ないとか・・・)。直通列車の減少は普通運賃での利用客の減少に拍車をかけ、さらなる赤字幅の拡大を招き、部分廃止の可能性を増すことに・・・。また、開業以来一貫して使用してきた一般用DCであるKTR700・800形の更新もそろそろ視野に入れる必要があり、車両の切れ目が運の切れ目ということも十分考えられます。
もっとも京都府としては当面、兵庫県に対し補助金負担の増額を迫るという駆け引きをしているに過ぎず、必ずしも即廃止ということにはならないのかも知れません。私が加悦SL広場を訪ねるべく平日の昼間に天橋立以西を利用した際にも、豊岡行きの「ディスカバリー61号」は必ずしも空気輸送というわけではなく、交換した西舞鶴行きもそこそこ利用されている印象でしたが……(しかしそれも京丹後市の中心がある峰山~網野界隈から東の話なのかも知れず、豊岡まで乗り通しているわけではありませんので悪しからず……m(_ _)m)。また、廃止区間も果たして天橋立以西なのか、それとも網野以西なのかも現時点でははっきりしません。
何はともあれ、どんなローカル線沿線にしても、鉄道の存在が辛うじて地域のまとまりを維持する核となり、かつその地域の魅力を発信して外部の人間を引き込むパイプになっている側面はあると思われるわけで、鉄道を失った地域の衰退が加速度的に進むことも様々な事例からみて明らかでしょう。もちろん鉄道自身にも、単に補助金に依存するのではなく透明で切り詰めた経営が必要でしょうが、同時に決して赤字黒字といった尺度では割り切れない公共財としての価値が鉄道にはあるはず。このへんを踏まえて何とかKTRが命脈を保ってくれることを、一ファンとして祈らずにはいられません……。
それにしても、今から約30年前まで宮津線にDC急行「大社」(名古屋~米原~敦賀~小浜線~宮津線~豊岡~出雲市~大社) が走っていたなんて、遥か遠い昔の話になってしまいました。1981年の時刻表を眺めながら、《全国鉄道網》が輝いていた時代の名残を感じて溜め息をついております。もちろん、1980年代に入ると、この列車を通しで乗る客はごく少数のDC急行マニアしかいなかったのでしょうが……。
※問題点をご指摘頂いた方へ:ありがとうございました m(_ _)m