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ミステリ感想-『誰もわたしを倒せない』伯方雪日

2006年12月05日 | ミステリ感想
~あらすじ~
後楽園のゴミ捨て場で発見された死体は髪を切られていた。
格闘技ファンの刑事・城島の指摘で、被害者がカタナというマスクマンではないかという可能性が浮かび上がる。
プロレスも格闘技も両方こなすカタナが被害者なのか? そして第二の死体が現れ……。(覆面)

「最強とはなにか?」を問う前代未聞の格闘技ミステリ。

~収録作品~
覆面
偽りの最強
ロープ
誰もわたしを倒せない


~感想~
プロレス・格闘技を題材とした連作ミステリ。だが、題材の目新しさだけに留まらない、ミステリ書きとしての巧みさが光る。
これがデビュー作ながら心憎いばかりにミステリの肝を心得ており、格闘技ファンではなくても楽しめるだろう。もちろんファンならばよりいっそう楽しめるのは当然。
あまり触れすぎるとネタバレするが、ある一編は「ここでこのトリックを使うか!」と唸らせてくれた。ミステリバカにはもはや辟易のあのトリックで、ここまで驚かされたのは初めてかも。連作ならではの工夫を凝らした伏線も実にうまい。
この腕ならば、格闘技ネタを用いずとも傑作をものせることは間違いない。とはいえ、今後も格闘技ミステリという未開の地平を切り開いてほしいのも本音である。
それにしてもあのトリックといい、この世界でしかありえない動機といい、ミステリにはまだ金脈が眠っていたものだ。


06.12.5
評価:★★★☆ 7
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