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ミステリ感想-『天使が消えていく』夏樹静子

2006年12月11日 | ミステリ感想
~あらすじ~
台風が九州を縦断した夜、ホテルで宿泊客の男が絞殺された。
その後、ホテルの経営者も青酸カリの入った牛乳を飲み、不審な死を遂げる。
一方、心臓疾患を抱えるゆみ子の母・神崎志保を母親失格と見た婦人誌の記者・砂見亜紀子は、ゆみ子の世話をかいがいしく焼くが……。


~感想~
「操り」の最高峰にして極北。
昨今、流行している「操り」を題材としたミステリだが、京極夏彦のアレと双璧を成すだろう代表作がこれである。
ネタバレにならない程度に言うならば、その「操り」の手管は作中人物のみならず、読者にまで及んでおきながら、叙述トリックではないのが目新しい。
ことにタイトルの意味するところが明らかになり、構図が反転していくのはお見事。起こる事件と謎解きこそ、地味で地道なものだけに外見で損をしているが、この構成は本当に素晴らしい。
ミステリ史的にも意義の深い作品ながら、なんと江戸川乱歩賞は落選しているのだから、その頃のレベルの高さが知れるというもの。……いや、乱歩賞ってやつぁ昔からこうだったという傍証かもしれんけど。


06.12.11
評価:★★★☆ 7
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