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ミステリ感想-『百万のマルコ』柳広司

2007年06月06日 | ミステリ感想
~あらすじ~
黄金があふれる島ジパングで、私は黄金を捨てることで莫大な黄金を手に入れた――。
囚人たちが退屈に苦しむジェノヴァの牢。新入り囚人“百万のマルコ”ことマルコ・ポーロは、彼らに不思議な物語を語りはじめる。いつも肝心なところが不可解なまま終わってしまう彼の物語。囚人たちは知恵を絞って真相を推理するのだが……。


~感想~
連作短編集。一編一編は20ページ程度と短く、気軽に取り組める。
そのぶん内容も薄く、「頭の体操」や中国故事が元ネタの話まで散見され、出題と同時に答えが解ってしまうこともしばしば。しかしそこは20ページ程度なのですらすら読み進められ、多少の質の低さは気にならない。謎と答えよりも熟練の腕前でものされた物語自体が楽しく、それが13編も集まると一定の満足感は得られる。
飛び抜けて面白い一編こそないが、質より量、騙りより語りの物量作戦は成功を収めたと言えよう。
それにしても、13編そろって初めて勝負になるというのに、たった1編取りだして(それも2年連続で)年度代表作としてしまう『本格ミステリ』シリーズの選考基準っていったいなんだろう。(シリーズファン以外は置いてけぼりの『黒の貴婦人』を選んだり)


07.6.4
評価:★★★ 6
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