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ミステリ感想-『制服捜査』佐々木譲

2007年06月13日 | ミステリ感想
~あらすじ~
警察官人生25年。不祥事をめぐる玉突き人事のあおりで、強行犯係の捜査員から、単身赴任の駐在勤務となった川久保。「犯罪発生率、管内最低」の健全な町で、川久保が目撃した荒廃の兆し、些細な出来事。
この町は本当に平和で静かな町なのか? 捜査の第一線に加われない駐在警官が、よそ者を嫌う町の犯罪を暴いていく。
06年このミス2位。

~収録作品~
逸脱
遺恨
割れガラス
感知器
仮装祭


~感想~
傑作。冒頭の「逸脱」から度肝を抜かれた。
一人の駐在警官の視点で丹念に紡がれた物語は実に重厚。駐在であるために限定される捜査と情報で地道に真相を暴いていくさまを、抜群の筆力で支えている。
警官だが川久保には警察の武器である組織力も権力もない。その捜査手法も権力も私立探偵とさして変わらず、警察小説でありながら探偵小説でもあると言えよう。限られた力で真相を追う、静かな闘志を燃やす主人公に共感すること請け合いだ。
物語としての質の高さはもちろんのこと、そこは昨年のこのミス2位、本格ミステリとしても意外な真相や鋭いトリックで驚かせてくれる。「逸脱」の結末には鳥肌が走った。警察小説と探偵小説の融合として、新たなる地平を切り拓いた極上の作品である。


07.6.13
評価:★★★★☆ 9
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