~あらすじ~
夏油温泉に向かうバスが転落し、多くの犠牲者を出した。
不幸な事故と思われたが、生き残った被害者の一人が、事故現場で男が誰かに殺されたと主張し……。
~感想~
引き算の美学。私の戦闘力は112,000円です。
冒頭、まずは中町ミステリ名物のいかにも叙述トリックが仕掛けられていそうな独白に目が行く。
「犯人はこの私です」と遺書を残し自殺した妻に困惑する男の独白で、探偵役の氏家と病院で初めて会ったときの回想をするのだが、つづく一章では早速その病院での氏家との出会いが描かれ、2組の夫婦が登場する。
すると我々のようなひねくれたミステリバカは当然、「その夫婦の妻たちが犯人ではない」と予想してしまいがちなのだが、真相がどうなのかはぜひその目で確かめてほしい。用法は間違っているが「引き算の美学」という言葉を思いだす見事な結末だったことは付記しておこう。
叙述だけではなく中町ミステリ名物の「旅行先での殺人」「最有力候補の容疑者は即殺される」「ダイイングメッセージ」も健在で、そのあたりもご注目。
ただ、平易なわりに冗長な(というか2時間ドラマ的な)内容的にくり返しの多い会話や文体は若干くどい。
ともあれアマゾンのマーケット・プレイスで112,000円で売られている本作、値段はともかく中町ミステリの良さが味わえる佳作でした。
08.6.10
評価:★★★ 6
夏油温泉に向かうバスが転落し、多くの犠牲者を出した。
不幸な事故と思われたが、生き残った被害者の一人が、事故現場で男が誰かに殺されたと主張し……。
~感想~
引き算の美学。私の戦闘力は112,000円です。
冒頭、まずは中町ミステリ名物のいかにも叙述トリックが仕掛けられていそうな独白に目が行く。
「犯人はこの私です」と遺書を残し自殺した妻に困惑する男の独白で、探偵役の氏家と病院で初めて会ったときの回想をするのだが、つづく一章では早速その病院での氏家との出会いが描かれ、2組の夫婦が登場する。
すると我々のようなひねくれたミステリバカは当然、「その夫婦の妻たちが犯人ではない」と予想してしまいがちなのだが、真相がどうなのかはぜひその目で確かめてほしい。用法は間違っているが「引き算の美学」という言葉を思いだす見事な結末だったことは付記しておこう。
叙述だけではなく中町ミステリ名物の「旅行先での殺人」「最有力候補の容疑者は即殺される」「ダイイングメッセージ」も健在で、そのあたりもご注目。
ただ、平易なわりに冗長な(というか2時間ドラマ的な)内容的にくり返しの多い会話や文体は若干くどい。
ともあれアマゾンのマーケット・プレイスで112,000円で売られている本作、値段はともかく中町ミステリの良さが味わえる佳作でした。
08.6.10
評価:★★★ 6