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ミステリ感想-『名探偵は九回裏に謎を解く』戸松淳矩

2008年06月20日 | ミステリ感想
~あらすじ~
背たけは高いがこれ以上ないくらい不器用な転校生の鳴門は、なんと前の高校で甲子園に出場した超高校級エースだった!?
弱小野球部に救世主がと色めきたったとたん、野球部コーチの命が何度も狙われ、あげくに誘拐事件が発生し……。


~感想~
下町ミステリ第二弾。30年近く前の作品だがまったく古びていない。
スラップスティック調の描写はますます冴え渡り、ただ物語を追っていくだけでも楽しいが、話が進むごとに事件は錯綜していき、まったくつかみどころを見せない。
そしてがぜん盛り上がる野球大会のクライマックスと同時に、全ての謎が解けるという構成が実にうまい。すこしネタバレしてしまうが、昨今の流行である、表の事件を語ることで裏で同時に進行している真の事件を覆い隠すという趣向の、お手本のようなトリックにうなる。
構成の妙、トリックの妙、会話の妙、熟練の技巧を感じさせる秀作です。地球に復刊してくれてよかった。


08.6.19
評価:★★★☆ 7
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