~あらすじ~
精神科医の榊は17歳の少女・亜左美を患者として受け持つことになった。
亜左美は敏感に周囲の人間関係を読み取り、治療スタッフを振りまわす。榊は「境界例」との疑いを強め、厳しい姿勢で対処しようと決めた。
しかし、臨床心理士である広瀬は「解離性同一性障害(DID)」の可能性を指摘し、榊と対立する。
~感想~
はっきり言って大きな事件も謎もトリックもなく、精神病院と博物館の日常を描いているだけなのだが、それを熟練の筆さばきと抜群のストーリーテリングで一級の読み物に仕立て上げた傑作である。
物語中盤、ただ精神病の事例を淡々と述べているだけの場面がまったく退屈ではなく、むしろ引き込まれてしまうその手腕。一見なんのつながりもない二つの展開がつながったとき、特段意外性も驚くこともないが、物語に一本の芯を貫き、全体を引き締めてしまうのだからすごい。
サプライズもトリックもロジックもなしに、語りの上手さだけで傑作ミステリはものせるのだなあ。
09.3.10
評価:★★★★ 8
精神科医の榊は17歳の少女・亜左美を患者として受け持つことになった。
亜左美は敏感に周囲の人間関係を読み取り、治療スタッフを振りまわす。榊は「境界例」との疑いを強め、厳しい姿勢で対処しようと決めた。
しかし、臨床心理士である広瀬は「解離性同一性障害(DID)」の可能性を指摘し、榊と対立する。
~感想~
はっきり言って大きな事件も謎もトリックもなく、精神病院と博物館の日常を描いているだけなのだが、それを熟練の筆さばきと抜群のストーリーテリングで一級の読み物に仕立て上げた傑作である。
物語中盤、ただ精神病の事例を淡々と述べているだけの場面がまったく退屈ではなく、むしろ引き込まれてしまうその手腕。一見なんのつながりもない二つの展開がつながったとき、特段意外性も驚くこともないが、物語に一本の芯を貫き、全体を引き締めてしまうのだからすごい。
サプライズもトリックもロジックもなしに、語りの上手さだけで傑作ミステリはものせるのだなあ。
09.3.10
評価:★★★★ 8