~あらすじ~
予備校受験のために上京した孝史は、二月二十六日未明、ホテル火災に巻き込まれた。
間一髪で、時間旅行の能力を持つ男に救助されたが、そこはなんと昭和十一年。雪降りしきる帝都・東京では、いままさに二二六事件が起きようとしていた……。
~感想~
SF要素を巧みに用いたトリッキーなミステリ……などでは断じてなく、二二六事件を背景に、タイムスリップというスパイスを利かせ、一人の青年の成長と、日本という国の時代の流れを描いた秀作である。
したがって事件自体に意外性や謎、トリックや伏線などはほとんどなく、見るべきはタイムスリップという要素をうまく活かした、未来からの来訪者の介入による歴史の変化と、その後日談にある。
むしろここだけが見所と言っても過言ではなく、SFと二二六事件を絡めたわりにいたって地味な、盛り上がりに欠ける物語を、一気に良作にまで持っていく力がある。
あまり数は読んでいないが、個人的にはタイムスリップを絡めたミステリとしては、乾くるみ「リピート」や浦賀和宏のアレ(タイムスリップが題材だと明かすとネタバレするので伏せる)にも肩を並べる傑作だろう。
昭和史好きよりも、SF好きにはぜひおすすめしたい。うちの親父も太鼓判を押してます。
09.3.29
評価:★★★☆ 7
予備校受験のために上京した孝史は、二月二十六日未明、ホテル火災に巻き込まれた。
間一髪で、時間旅行の能力を持つ男に救助されたが、そこはなんと昭和十一年。雪降りしきる帝都・東京では、いままさに二二六事件が起きようとしていた……。
~感想~
SF要素を巧みに用いたトリッキーなミステリ……などでは断じてなく、二二六事件を背景に、タイムスリップというスパイスを利かせ、一人の青年の成長と、日本という国の時代の流れを描いた秀作である。
したがって事件自体に意外性や謎、トリックや伏線などはほとんどなく、見るべきはタイムスリップという要素をうまく活かした、未来からの来訪者の介入による歴史の変化と、その後日談にある。
むしろここだけが見所と言っても過言ではなく、SFと二二六事件を絡めたわりにいたって地味な、盛り上がりに欠ける物語を、一気に良作にまで持っていく力がある。
あまり数は読んでいないが、個人的にはタイムスリップを絡めたミステリとしては、乾くるみ「リピート」や浦賀和宏のアレ(タイムスリップが題材だと明かすとネタバレするので伏せる)にも肩を並べる傑作だろう。
昭和史好きよりも、SF好きにはぜひおすすめしたい。うちの親父も太鼓判を押してます。
09.3.29
評価:★★★☆ 7