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ミステリ感想-『十三番目の陪審員』芦辺拓

2010年12月29日 | ミステリ感想
~あらすじ~
架空の殺人事件を演出し、その容疑者として冤罪の実態を取材する「人工冤罪」計画の犯人役に志願した鷹見瞭一は、DNA鑑定すら欺く偽装を経て、予定通り警察に連行された。
ただし、全く身に覚えのない現実の殺人容疑者として。
関西初の陪審法廷での弁護を引き受けた森江春策が、驚愕の真相を暴き出す。


~感想~
まだ裁判員制度ができていない時期に書かれた異色の法廷ミステリ。
架空の陪審員法を用いているが、裁判員制度と多くが重なるため、いまの読者ならばすんなり話に入れるだろう。
が、惜しむらくは読む時期を完全に逸してしまい、せっかく作者が趣向を凝らした、独自の陪審員法や、それを軸に据えた個性的な仕掛けなどは、魅力が半減してしまった。
架空の法律が制定されたことから生じるあつれきや、世間の反応などなど見どころはたくさんあるのに、実際に裁判員制度が導入された現在の視点からは、どれも新鮮味が失われ、しかも裁判員制度が順調に推移している現実と比べると、作中の陪審員法に対する無理解や反発はもはや平行世界を描いたSFにも等しくなってしまっている。
類まれな労作だけに、今さら読んだのは悔やまれる次第である。


10.12.24
評価:★★☆ 5
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