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ミステリ感想-『星読島に星は流れた』久住四季

2016年09月10日 | ミステリ感想
~あらすじ~
頻繁に流星が落ちるという星読島に住むサラ博士は、年に一度フォーラムに集う参加者を呼び寄せ、観測会を催していた。
妻子を亡くして以来、坦々と日々を過ごす医師の加藤盤はメンバーに選ばれ、星読島で個性的な面々と出会う。
そして星読島に星は流れ、一人が他殺体で発見される。

2015年本ミス10位


~感想~
著者の実に5年ぶりの長編にしてラノベ媒体を離れた初作品とのこと。
ミステリとしての魅力のほとんどがネタバレにつながるため詳しくは語れないが、孤島物に始まりフーダニットからハウダニット、そしてホワイダニットへと流れ、最後には意外な要素が飛び出す、実にオーソドックスかつ丁寧に書かれた、現在ではかえって珍しい王道の本格ミステリに仕上がっている。

ミステリ要素以外のところに触れるとラノベ畑で磨いてきたキャラ造形は抜群で、理系ツンデレ美少女、自称アクティブ系ニート、天然博士、体育会系にして家庭的なアラサー女子などなど個性的な面々を集め、後日談では全員のその後に簡単に触れてくれ、また概要だけ見れば非常に後味の悪い話なのだが、前向きで明るい光の見えるラストも素晴らしい。
文庫版あとがきによれば、二度と長編を書けないかもしれないとまで危惧したそうだが、初のラノベ外作品でいきなり本ミス10位にランクインするとは驚嘆に値するし、初期作品にも興味を抱かせるに十分な佳作である。


16.9.6
評価:★★★ 6
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