小金沢ライブラリー

ミステリ感想以外はサイトへ移行しました

ミステリ感想-『メーラーデーモンの戦慄』早坂吝

2018年09月15日 | ミステリ感想
~あらすじ~
「一週間後、お前は死ぬ」メーラーデーモンからガラケーに届く殺害予告が現実になり次々と犠牲者が現れる。顧客を殺された上木らいちは犯人を追い、謎めいたツイートを残す。一方、刑事を辞めた藍川は青の館に流れ着き、仮面生活を始める。


~感想~
ここ2作は社会派と本格を融合させつつ館ミステリに新境地を拓いたり、空前絶後の密室を描いたシリーズが原点回帰。大抵の無茶な展開を「性技がすごい」で強引に納得させ、無数の筋道からわざわざエロ縛りを選びつつも、破綻を生じさせず、1~2作目の頃のようなエロ伏線とエロトリックが火を噴く。
特に○○○○から導き出されるダブルミーニング(?)とそれを軸にした論理展開には度肝を抜かれるが、やってることを絵で思い浮かべると完全無欠にエロ&バカ。真犯人の動機や開き直ったようなメタ要素もバカなのだが、総括するとよくぞこれを200ページちょいでまとめてみせたと感心するばかり。
シリーズの他作品に登場したキャラが顔を出し、過去の話も多々言及され、まさにこれまでの集大成と呼ぶべき傑作である。
デビュー以来の作者の打率の高さと、全く軸のぶれない安定感には本当に驚かされる。いや本当に今最も安定感あるミステリ作家なんじゃなかろうか。


18.9.14
評価:★★★★ 8
コメント