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ミステリ感想-『鏡面堂の殺人』周木律

2018年12月30日 | ミステリ感想
~あらすじ~
失意の淵に沈んだ宮司百合子を、善知鳥神は始まりの地へと誘う。
外装も内装も鏡で覆われた鏡面堂で過去に起こった2つの事件。
百合子にその謎を解くよう、彼女と彼は迫る。
堂シリーズ第6弾。


~感想~
前作「教会堂の殺人」は、ルールもよくわからないまま堂の中へ放り込まれ、何が何だかわからないままみんな死ぬという矢野龍王マジリスペクトな物語で、挙げ句に「シリーズも折り返し」と10作確定演出が出てしまい正直なところうんざりした。
しかし良いペースで出ていた続編の音沙汰が無くなり、3年ぶりに出てきた本作は、まさかの文庫書き下ろしに加え、次でシリーズ完結と打ち切りエンド……もといプラン変更を迎えてしまった。

というわけで仕切り直しとなった本作は、2.5作分の価値ある佳作で、完結編への期待を持たせるには十分だった。
まあトリック自体は「こんな化学変化があります」という二階堂黎人マジリスペクトな代物だが、肝心のシリーズおなじみのアレは、あまりのエレガントさとその用途に思わず吹き出したほどで、ファンは確実に満足することだろう。
またシリーズを10冊で構想していた頃は、本作はその立ち位置から綾辻行人マジリスペクトで7冊目に、つまり堂シリーズ版「暗黒館の殺人」に想定されていたのでは……とも思ったり。
一方で数学ネタは「ヒルベルトの無限ホテルのパラドックス」が紹介され「無限ホテルが満室の時~」と初っ端から数学オンチなら「無限が満室ってありえなくね?」と疑問が湧くところだがそこは華麗にスルーしたままさわりだけで終わってしまうのがあいかわらず残念。「Q.E.D.」なら可奈が絶対聞くし橙馬が絶対答えてるはず。

ともあれシリーズ後半を5冊掛けてじっくり書くよりも、2冊に凝縮したことは確実に奏功しており、作者曰く「煉瓦本とはいかずとも、なかなかの分量となりそう」と予告された完結編は、早くも2月に刊行されるそうで、非常に楽しみになった。


18.12.20
評価:★★★ 6
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