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ミステリ感想-『誘拐作戦』都筑道夫

2019年02月12日 | ミステリ感想
~あらすじ~
無断借用したフォルクスワーゲンを乗り回すチンピラ四人組と、古色蒼然たるフォードの主が路上に倒れた女を発見。
知人だと思い連れ帰ったものの、人違いだったが金持ちの娘だと気づき、一転して誘拐計画を企てることに。

1963年日本推理作家協会賞候補、東西ベスト(1985)89位


~感想~
道路で拾った死にかけの女が金持ちの娘だと気づいた犯人グループが、そっくりの女を替え玉に仕立て、変型の狂言誘拐を企てる…というただでさえ入り組んだプロットなのに、さらに登場人物のうち2人が章ごとに入れ替わって作者を務める趣向まで凝らし、最後はそれどころではない明後日の方向に突き抜けるトリッキーすぎるミステリ。

伏線やフェアプレイぶりは正直なところいまいちだし、会話も何もかも古臭い。作者が入れ替わっても文体はそのままで、作者当ての設問はほとんど意味をなさない。
だがしかし本作は1962年に、すなわち57年前に書かれたという事実がとにかく恐ろしい。昭和も昭和の大昔にこの発想をし、これを実行したことだけで十分にお釣りが来る、読む価値のある作品である。


19.2.6
評価:★★★ 6
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