~あらすじ~
小学5年生の時、一家心中から一人生き残った山上幸子は、十数年経った今でも両親を恨み、トラウマを抱えていた。
幸子は偶然出会った女が、自分とは逆に一家心中から生き残った母親だと知り、強い興味を抱く。
~感想~
こいつ地獄に落ちればいいのに。
いきなり暴言を吐いてしまったが、当初はクソヤロー揃いのクソヤローバトルロワイヤルかと思ったが、終わってみればクソヤローは一人だけだった。そしてそのクソヤローがほとんど一人勝ちで幕を閉じるのだから、正直な感想が漏れてしまうではないか。
山上幸子はおそらく作者初の女性の語り手だが、不幸な過去を差し引いても非常にいけ好かないクソヤローである。
ところが陰キャで口下手で容姿も十人並みの彼女が、婚活パーティーで金持ちイケメンに一目惚れされるのだから初っ端から納得が行かない。
しかも幸子は過去にしか目が向いておらず、まるでイイ女のように彼氏を振り回し、トラウマと対峙するどころか、自ら傷口を広げる。それだけならまだしも他者の傷口を嬉々としてえぐり、塩をすり込んでいくのだ。
その過程で現れる登場人物たちが、揃いも揃ってクソヤローばかりで、前述した通りクソヤローどもによるバトルロワイヤルが繰り広げられるのかと思いきや、終わってみればクソヤローは一人だけだった。それが誰かはネタバレになるので明かさないが、きっと描かれていないだけで、物語の続きでは、ものすっごいキャラの薄かったあの人に酷い目に遭わされるのだろうと願ってやまない。
だってそうでもなければ帳尻が合わないではないか。あの後きっと藤子FのSF短編か舞城ワールドに入るんだよね。そうだよね。
バレッバレの伏線がいくつかあり、だいたいの想定通りに転がるのでミステリとしてはあんまり出来は良くないものの、登場人物たちの振る舞いに、心を別の意味で揺さぶられる謎の感情移入をしてしまい、なかなか面白い読書体験だった。
それにしてもこの作者はデビュー作からずっと、他の作家なら避けて通るような厄介な題材ばかり採り上げて、それで一定以上の質は保っているのだからすごい。地味ながらもっと評価されるべき作家である。
19.2.15
評価:★★★ 6
小学5年生の時、一家心中から一人生き残った山上幸子は、十数年経った今でも両親を恨み、トラウマを抱えていた。
幸子は偶然出会った女が、自分とは逆に一家心中から生き残った母親だと知り、強い興味を抱く。
~感想~
こいつ地獄に落ちればいいのに。
いきなり暴言を吐いてしまったが、当初はクソヤロー揃いのクソヤローバトルロワイヤルかと思ったが、終わってみればクソヤローは一人だけだった。そしてそのクソヤローがほとんど一人勝ちで幕を閉じるのだから、正直な感想が漏れてしまうではないか。
山上幸子はおそらく作者初の女性の語り手だが、不幸な過去を差し引いても非常にいけ好かないクソヤローである。
ところが陰キャで口下手で容姿も十人並みの彼女が、婚活パーティーで金持ちイケメンに一目惚れされるのだから初っ端から納得が行かない。
しかも幸子は過去にしか目が向いておらず、まるでイイ女のように彼氏を振り回し、トラウマと対峙するどころか、自ら傷口を広げる。それだけならまだしも他者の傷口を嬉々としてえぐり、塩をすり込んでいくのだ。
その過程で現れる登場人物たちが、揃いも揃ってクソヤローばかりで、前述した通りクソヤローどもによるバトルロワイヤルが繰り広げられるのかと思いきや、終わってみればクソヤローは一人だけだった。それが誰かはネタバレになるので明かさないが、きっと描かれていないだけで、物語の続きでは、ものすっごいキャラの薄かったあの人に酷い目に遭わされるのだろうと願ってやまない。
だってそうでもなければ帳尻が合わないではないか。あの後きっと藤子FのSF短編か舞城ワールドに入るんだよね。そうだよね。
バレッバレの伏線がいくつかあり、だいたいの想定通りに転がるのでミステリとしてはあんまり出来は良くないものの、登場人物たちの振る舞いに、心を別の意味で揺さぶられる謎の感情移入をしてしまい、なかなか面白い読書体験だった。
それにしてもこの作者はデビュー作からずっと、他の作家なら避けて通るような厄介な題材ばかり採り上げて、それで一定以上の質は保っているのだからすごい。地味ながらもっと評価されるべき作家である。
19.2.15
評価:★★★ 6