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ミステリ感想-『ベルリンは晴れているか』深緑野分

2019年02月26日 | ミステリ感想
~あらすじ~
終戦後のベルリンでウェイトレスとして働くドイツ人少女アウグステ。
突如ソ連軍に呼び出され、恩人が不審死したことの容疑を掛けられた彼女は、プロパガンダ映画でユダヤ人を演じた俳優とともに調査を命じられる。

2018年このミス2位、文春3位、直木賞候補、大藪春彦賞候補、本屋大賞候補


~感想~
前作ではないが第二次世界大戦を描き2015年にこのミス2位、文春3位と全く同じ評価を受けた「戦場のコックたち」と比べると一段も二段も下がり、それどころか良かった点がほぼ壊滅しており、なぜこんな高評価なのか理解に苦しむ。

まずいくら終戦後の混乱期とはいえ、一介の庶民二人がソ連軍の依頼で事件を調査するという設定が無茶。ヒロインのアウグステが熱心に取り組む動機も不明で、最後には明かされるものの、伏せてここまで引っ張るならこれしかないという動機で、がっかりする。
道中でいろいろ起こるもののメインの話は遅々として進まず、そうした小事件やサブキャラたちが本筋に絡むことも無く、ただ起こっているだけで伏線として一切機能しないのもがっかり。
ラストは急転直下で危機に陥るものの、その脱出法はなぜかナレーションで語られるため盛り上がりに欠け、真相はよく意味がわからないし絶対成功するとも思えない、というかどう転んでも放っておけば破綻するような陰謀で、もはや物語の構成そのものが失敗しているとしか思えない。

終戦後のドイツという舞台に知識がなく、敗戦国の過酷な日常は興味深く読めたものの、エンタメ・冒険小説として描くなら、せめてもう少し伏線と回収というものを付けておくべきで、ミステリ、何より小説としては減点ポイントが多過ぎて、自分は全然楽しめなかった。


19.2.24
評価:★☆ 3
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