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ミステリ感想-『白魔の塔』三津田信三

2019年06月26日 | ミステリ感想
~あらすじ~
灯台守になった物理波矢多は赴任先の轟ヶ崎灯台に伝わる「白もんこ」と呼ばれる妖怪の存在を聞かされる。
白衣の森、白屋、白女――白にまつわる怪異が集まるそこに、白い灯台は建っていた。
シリーズ第二弾。


~感想~
三津田ミステリの最高傑作が「首無」ならホラーの最高傑作はこれかもしれない。三津田ホラーあまり読んでいないが。灯台が舞台ながらまずなかなか灯台にたどり着かず、着いたら着いたでそこからも動きが無い。三津田作品史上最も動きが少ない。
しかも古き良き探偵小説のプロットだった前作とは打って変わり、ミステリらしい解くべき謎は全く見当たらず、現在の怪異と過去の怪異が淡々と語られていき、終盤を迎える。
そして物理波矢多は一連の話に合理的な解釈を試みるのだが…ここからが怒涛の展開に。
何も起きていなかったはずの、ただ怪談がいくつか語られただけに見えた物語に、いくつもあった不自然な描写や違和感の背後から三津田史上最大級の怪異が次から次へと顔を出す。生霊の如き重るものからの現物ドーン!にはもはや笑うしかなかった。
前作「黒面の狐」は多少アレンジすれば刀城言耶シリーズとして再利用できたが、本作は別シリーズならではの怒涛の怪異と超展開で、刀城言耶とは一線を画した。前作がやや期待外れと感じた人ほど読んで欲しい良作である。


19.6.25
評価:★★★★ 8
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