小金沢ライブラリー

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ミステリ感想-『密室に向かって撃て!』東川篤哉

2003年07月15日 | ミステリ感想
~あらすじ~
その夜、烏賊川市の外れ、鳥ノ岬にある十条寺食品社長宅に銃声が轟いた。撃たれたのは、偶然いあわせた「名探偵」。
事件は探偵がかすり傷でうめいている間に起こる。銃声のカウントダウンとともに、明らかにされた真実とは?


~感想~
軽妙な語り口にぐいぐい引き込まれる。筆力はもちろんユーモアの腕も上がった。
緻密な細工だけに、とてもそうは見えない(失礼)軽そうな、テキトーな感じの(さらに失礼)構成がなんとも惜しい。
見せ方を工夫すれば、もっとパズラーとしての面白さが増したろうに。
ともあれ、独自の道を歩む良作。氏からは目を離せない。


03.7.15
評価:★★★☆ 7
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ミステリ感想-『大密室』アンソロジー

2003年07月04日 | ミステリ感想
~収録作品~
壷中庵殺人事件  ――有栖川有栖
ある映画の記憶  ――恩田陸
不帰屋  ――北森鴻
揃いすぎ  ――倉知淳
怪獣は密室に踊る  ――西澤保彦
ミハスの落日  ――貫井徳郎
使用中  ――法月綸太郎
人形の館の館  ――山口雅也


~感想~
『壷中庵殺人事件』
トリックだけの一編。

『ある映画の記憶』
詩情にいろどられた作品は好きじゃないんです。あと(ネタバレ→)絵の中の松林 は伏線不足。

『不帰屋』
いつもどおり。筆力十分。素材も謎もキャラもいいのに、どうしてこうも構成が下手なのか。
のんべんだらりと流れる、クライマックスも山も谷もない実に退屈な作品。サプライズも専門的すぎ。

『揃いすぎ』
来ました猫丸先輩。もちろんハズレなし。

『怪獣は密室に踊る』
こう見えて論理と伏線で塗り固められているが――要するに僕はこのシリーズが肌に合わない。

『ミハスの落日』
気どった描写に浮いた感のある「密室」の二文字。ほとほとうんざりのトリック。ダメだ。

『使用中』
作中で結末をほのめかしたのでよかった。そうでなければ――。

『人形の館の館』
なぜよりによってこれを。


~総括~
八者八様の密室観が興味深い。章末のエッセイこそが主眼か。


03.7.4
評価:★☆ 3
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ミステリ感想-『山伏地蔵坊の放浪』有栖川有栖

2003年07月03日 | ミステリ感想
~収録作品~
ローカル線とシンデレラ
仮装パーティーの館
崖の教祖
毒の晩餐会
死ぬ時はひとり
割れたガラス窓
天馬博士の昇天


~感想~
『ローカル線とシンデレラ』
某急行を気どったようなトリック。「人間が描けていない」云々のミステリ批判の原因は、ぜったい氏に半分くらいの責任があると思う。

『仮装パーティーの館』
無理にスラップスティックにしなくても……。ミステリ好きの小学生が思いついたようなトリック。

『崖の教祖』
ミステリ好きの小(以下略)。ホラ話って設定に逃げてません?

『毒の晩餐会』
人数が多すぎる。トリックは悪くないのに、人数が多すぎてなにがなにやら。

『死ぬ時はひとり』
(ネタバレ→)さんざっぱら他殺、他殺言っておいてそりゃないだろ。
話に入る前に一度も殺人とは言ってないって? 
でもさあ……。

『割れたガラス窓』
パズラーとしての完成度を高めていれば……との思いは上2編と共通。
中編なみの分量にして、法月くらい練っていれば。

『天馬博士の昇天』
……すごい。あまりにも壮絶な真相に、怒りを通り越して、唖然呆然愕然慄然。
コメディ・パロディとはいえ酷すぎないか? この分量で、掉尾を飾る一編で……これ?

~総括~
末尾の一編があまりにも納得いかない。故に印象はとことん悪く、時間をものすごく損した感。


03.7.3
評価:★ 2
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ミステリ感想-『黒後家蜘蛛の会 2』アイザック・アシモフ

2003年07月02日 | ミステリ感想
~収録作品~
追われてもいないのに
電光石火
鉄の宝玉
三つの数字
殺しの噂
禁煙
時候の挨拶
東は東
地球が沈んで宵の明星が輝く
十三日金曜日
省略なし
終局的犯罪


~感想~
前作ほどの鋭さこそないが、期待を裏切らない謎譚ぞろい。
余人は気にも留めない単なる雑学が、次々と短編に生まれ変わる。
アシモフの見るものすべてが『黒後家蜘蛛の会』に昇華されてしまうのか。
人物・会話の描写はさらに磨かれた。


03.7.2
評価:★★☆ 5
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