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ミステリ感想-『新参者』東野圭吾

2010年01月02日 | ミステリ感想
~あらすじ~
江戸の匂いも残る、日本橋の片隅で発見された四十代女性の絞殺死体。
「なぜ、あんなにいい人が」と周囲は声を重ねる。彼女の身になにが起きていたのか。着任したばかりの刑事・加賀恭一郎は、未知の土地を歩き回る。


~感想~
読んでいて「東野圭吾ってこんなにうまかったっけ」と思うのはたしかで、下町情緒や人物の機微のうまさは「作者は宮部みゆきだったっけ」とあやうく思ってしまうほど。
連作短編集というにはすこし特殊な形式で、ひとつの事件にまつわる大小様々な謎を、加賀刑事が捜査の過程で解いていき、事件の真相とともに、周囲の日常の謎を暴いていくのだが、各々の謎のささやかさと、大元となる事件自体の小ささはともかくとして、その筆致の巧みさだけでも、読ませる力は充分にある。
と、持って回った言い方をしたのは、やはり謎とトリックの弱さがどうしても目に付いてしまい、このミス・文春ランキングぶっちぎり1位という評価とあいまって、(あくまで個人的に)それほどの作品とは思えないのが辛いところ。
人情小説として一級品なのは疑いないが、ミステリとして見ると、悪く言えば日常の謎を熟練の技術でつなぎあわせ、うまいことまとめて見せただけの作品に思えてしまうのだ。お笑いでたとえるなら、爆笑はないが突き抜けた技術でコント王の座を射止めた東京03のような。(僕は東京03大好きですよ)
これがダントツで各ランキングを制したと聞くと、『容疑者Xの献身』が五冠を達成した2005年と同様、(再三くり返すが個人的に)2009年は不作の年だったのかなあ、という念を覚えることを禁じえない。


09.12.24
評価:★★★☆ 7
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