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ミステリ感想-『月の裏側』恩田陸

2011年03月16日 | ミステリ感想
~あらすじ~
九州の水郷都市・箭納倉(やなくら)。ここで三件の失踪事件が相次いだ。
消えたのはいずれも掘割に面した日本家屋に住む老女だったが、じきに記憶を喪失したまま戻ってきた。
何者かによる誘拐か、新興宗教による洗脳か、それとも?
事件に興味を持った塚崎多聞らは〈人間もどき〉の存在に気づき……。
00年このミス11位。


~感想~
恩田陸といえば何度も書くが、風呂敷を広げる上手さと、広げた風呂敷をたたまないことに定評があるのだが、今回もまさにまさにの恩田節。
真相を投げっぱなしにした作品はままあるが、この作品はすっぽ抜けの投げっぱなしジャーマンといった雰囲気で、技への入り方、相手を固めるクラッチ、美しく弧を描くブリッジ……と完璧に決まっていながら、ただ結末という相手だけが置き去りで、単に美しく脳天から自爆しただけの作品である。
本当に中盤までは面白い。この未曽有の天災に見舞われた現状で「水」を題材にしたホラーに出会ったという、奇異なめぐり会わせと相まって、ふくらみにふくらんだ物語と、傑作への予感が、残りページ数が少なくなるごとに一気にしぼんでいく。恩田陸と浦沢直樹は3/4までが面白いのは承知していたが、それでもこちらの想定以上に何も起きない結末にはあ然とした。
なぜかこのミス11位にランクインしているのだが、「木製の王子」や「火蛾」より上位という以前にミステリーでもなんでもない、結末すらつかないホラーなので取り扱いに要注意。
でも、3/4までは傑作ですよ。


11.3.15
評価:★★ 4
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