~あらすじ~
姉だけが母から虐待される双子の姉妹。7つの部屋に監禁された姉弟。目覚めたら何者かに刺されていた無痛症の資産家。ハイジャックされ墜落寸前の機内で安楽死できる薬を売ろうとするセールスマン。
何なんだこれは! ジャンル分け不能の短編集。
03年このミス20位、文春8位、山本周五郎賞候補
~感想~
「何なんだこれは!」と「ジャンル分け不能」は単行本版の帯に書かれていたそうだが、この作品を一言で表すちょうどいい言葉を知っているから教えてあげよう。「世にも奇妙な物語」だ。
「世に奇も」は原作に著名作家の短編をよく用いているし、放送すれば欠かさず観ているから別にけなしているつもりはない。だが「世に奇も」にもままあるように口に合わない短編はあった。
ベストを挙げるならやはり収録作の中でもミステリに分類でき、映像化も難しそうな「Closet」だろう。やりすぎてファンタジーの範疇に入っている「カザリとヨーコ」や導入部は好みの「ZOO」、ホラーに分類できる「神の言葉」と文庫版で追加された掌編「むかし夕日の公園で」も良かった。
逆にワーストはどこにもオチが見当たらない(自分の感性ではこれにオチは見当たらない)「SEVEN ROOMS」と「落ちる飛行機の中で」になる。余談ながら某書評サイトで僕のワーストを揃ってベストに挙げられていてさすがに吹いた。
あと僕の知っている限り本当に「何なんだこれは!」と「ジャンル分け不能」が似合うのは森博嗣の短編だと思うよ。
おそらく「GOTH」が例外でこれが本来の乙一の作品なのだろう。それなのに「GOTH」が本格ミステリ大賞を射止めるなどミステリとしても高評価されたのを幸い、ミステリファンならぬ単なる乙一ファンが調子に乗って「GOTHが行けるならZOOも行けるはずや!」とこのミスその他で投票したがために各種ランキングに滑り込ませてしまったことは、大いに反省していただきたい。これをミステリ扱いされて一番困るのはきっと作者本人である。
ともあれミステリ、ホラー、SF、コメディとジャンルは多岐にわたるが(やっぱりジャンル分けできるじゃねえか)きわめて平易なおそろしいほど読みやすい文体で、何を書かせても一定水準を保っており、ファンならもちろんのこと、一般的な本読みならば普通に面白く読めることだろう。
僕のような頭の固いミステリ馬鹿の感想などガン無視してよし。
15.1.2
評価:★★☆ 5