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ミステリ感想-『黒祠の島』小野不由美

2015年01月21日 | ミステリ感想
~あらすじ~
調査事務所の所長・式部剛は「3日後に戻る。戻らなければ後始末を頼む」と言い残し失踪した友人・葛木志保を追い「夜叉島」へ渡った。
確かに島へ渡ったはずの彼女の痕跡は消され、島民は一様に口をつぐむ。
しかし式部は身元不明の女性の惨殺死体が発見されていた事実をつかむ。

01年本ミス3位、本格ミステリ大賞・候補


~感想~
不気味な因習の残る島。排他的な島民。消されていく失踪者の痕跡。廃屋に残る犯罪の跡。発見される惨殺死体。罪に裁きを下す怪物「解豸(かいち)」の伝承……と中盤までは抜群に面白い。
だがこれまでの経過が判明するだけで、解決編まで事件はほとんど進行せず、不自然なくらい唐突に協力的になる関係者たちの昔語りが延々と続き、中盤以降は退屈きわまりない。また登場人物の血縁関係は嫌になるくらい入り組んでいるのに、なぜか人物一覧が存在せず非常にややこしいのも難点。自分で作ればいいんだけれども。
ラスボスが大暴れし探偵の名推理が炸裂する解決編で多少持ち直すが、やるだけやったら揃ってさっさと退場するのも素っ気なく、メインとなるだろうトリックも読者を騙すためだけに仕掛けられたように浮いており、しかもほぼ予想通りの代物でどうにも物足りない。

まったくの偏見かつ失礼な物言いで、他の作品を比較対象に上げるような真似は最低の手法だと心得つつそれでもあえて言わせてもらえば、共通点の多い三津田信三の刀城言耶シリーズと比べあまりにも完成度が落ちるように感じられてしまう。
もし刀城言耶シリーズの刊行以後に出されていたら、本ミス3位などという高評価はありえなかっただろうと思えてならない。


15.1.17
評価:★★ 4
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