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ミステリ感想-『果断 隠蔽捜査 2』今野敏

2015年01月09日 | ミステリ感想
~あらすじ~
大森署の署長へ異動となった竜崎伸也警視長は、着任早々に重大事件に直面する。
容疑者は拳銃を所持し、現場ではSITとSATが対立する。竜崎は自ら指揮を執り、この事案は解決したはずだったが……。

07年日本推理作家協会賞、山本周五郎賞、このミス4位、文春9位


~感想~
前作ではマスコミ対策を手掛けた竜崎が、本作では署長に就任。署長が主人公というだけでも物珍しいのに、主人公はあの竜崎なのだ。これは面白くならないはずがない。
竜崎の完全無欠に正論ながらそれゆえにかえって奇抜に響く言動を追っているだけでも実に痛快で楽しく、それに加えて日本推理作家協会賞にふさわしい、解決したはずの事件が反転する構成や、意外な人物による些細な気付きも見事で、物語としてもミステリとしても万全の構え。
はじめの事件は竜崎が自ら前線に出ているため丹念に描かれるが、事件の様相の反転から始まる捜査のほうは、なにぶん竜崎が署長室に座ったまま動かないため、ひどくあっさりとしか触れられないのだが、文量の余計な長大化を防げてもいるし、話の肝は構図が反転すること自体にあるので気にはならない。
前作「隠蔽捜査」を確実に上回る良作である。

それにしてもドラマ版は未見なのだが(杉本哲太も古田新太もイメージと違いすぎるんだよなあ…。竜崎はもっと見るからにエリート然とした役者が良かった。それこそ柳葉敏郎とか)竜崎というキャラの面白さは心理描写あってこそのものだと思うが、そのあたりはどう処理していたのだろうかと今更ながらに思ってみたり。


15.1.8
評価:★★★★ 8
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