小金沢ライブラリー

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ミステリ感想-『鍵のかかった部屋』貴志祐介

2015年07月02日 | ミステリ感想
~収録作品とあらすじ~
密室の別荘で葬儀会社社長が、まるで自らの葬儀を開いたように異様な部屋で死んでいた。余命いくばくもない彼は自殺したのか、それとも……佇む男
刑期を終えて甥を訪ねた元泥棒の男。だがその当日に甥は練炭自殺を遂げた。しかし姪は犯人は義父だと訴え……鍵のかかった部屋
高校教師が建てた念願の新居は欠陥住宅だった。工務店の社長は頑なに責任を認めず、あまつさえ彼を脅そうとする。激怒した彼は社長を殺すが、現場は建て付けの悪さから密室状態になっていた……歪んだ箱
舞台公演のまっただ中、楽屋で発見された死体。しかし楽屋に入った犯人は舞台を通らずに逃げ出すことはできないはず……密室劇場

11年このミス17位、本ミス5位


~感想~
「狐火の家」に続き防犯ショップの店主にして現役の泥棒(?)榎本径と、残念な美人弁護士・青砥純子が活躍する短編集。
相変わらず4編そろっていまどき密室にこだわっているが、前作よりもトリックは物理に頼りがち。しかし表題作は機械的ながらその仕掛け方に工夫を凝らして見せた。
また「歪んだ箱」は完全無欠の物理トリックながら想像するだに笑うしかない力業で、これはぜひドラマ版の映像で見たかった。
現場の状況が細々しすぎていまいちつかみづらい「佇む男」と、肩の力を抜きすぎてバカミスというかただの悪ふざけになっている「密室劇場」はまあ置いとくとして、回が進むごとに青砥弁護士がどんどん残念になっていくのも見どころ。やはり個人的にはこの作者は短編のほうが楽しめるようだ。


15.6.13
評価:★★★ 6
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ミステリ感想-『狐火の家』貴志祐介

2015年07月01日 | ミステリ感想
~あらすじ~
一足先に帰宅した娘が密室状態の自宅で死に、第一発見者の父が疑われる。榎本は事件を解決したかに見えたが、それはさらなる事件の始まりに過ぎなかった……狐火の家
ペットの毒蜘蛛に噛まれ死んだ男は、事故死ではなく殺されたのか? 未亡人と蜘蛛愛好家の友人、犯人はどちらか?……黒い牙
滞在していたホテルで刺殺されたプロ棋士。女流棋士の恋人が語る彼の人物像と現場の状況はかけ離れていた……盤端の迷宮
劇団の座長が殺された。現場にいた犬に嫌われた容疑者と、好かれているが犬アレルギーの容疑者。犯人は……犬のみぞ知る

08年本ミス10位


~感想~
「硝子のハンマー」で活躍した防犯ショップの店主兼泥棒(?)の榎本径と、敏腕だが天然気味の弁護士・青砥純子のコンビが短編集で再登場。「鍵のかかった部屋」の題名でドラマ化もされており今さら説明はいらないだろう。

個人的には長編だと物足りなく感じる作者だが、短編になると実に切れる。
いまどき古臭い密室にこだわった破格の作風ながら、防犯ショップ店主で泥棒のくせに機械トリックにはさほど頼らず、主に心理的な分析から真相に迫る榎本の推理も面白く、4編それぞれに趣向を凝らし飽きさせない。
特に「狐火の家」は長編ばりのプロットで表題作にふさわしく、また「黒い牙」は虫嫌いなら卒倒しかねないほど嫌で嫌でたまらないトリックで、恐るべきことにドラマ化されているのだがいったいどうやったのか今さら興味が湧いた。
残り2編も榎本がコロンボかあるいは古畑任三郎に転じたり、軽妙なユーモアミステリに描いたりと、4編そろって質の高い好短編集である。


15.6.18
評価:★★★☆ 7
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