小金沢ライブラリー

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ミステリ感想-『模造殺人事件』佐々木俊介

2018年03月16日 | ミステリ感想
~あらすじ~
一作限りで筆を折った作家の大川戸孝平は、車がぬかるみにはまり山中の屋敷に助けを求める。
そこには二日前、長男を名乗る顔を包帯で覆い声の潰れた男が八年ぶりに帰宅したばかりだったが、さらにもう一人やはり包帯で顔を覆われた長男を名乗る男が現れたところで……。

「誰が殺したか? いかに殺したか? 俺が考えるに、問題はそんなところにはない。俺がお前に委ねたい設問はただこれひとつさ。
その屋敷でいったい何が起ったのか?」


2005年本ミス10位


~感想~
設定だけでもう面白い。
期待されるミイラ男同士の対決は意外にあっさり幕が引かれるが、本番はその後から。
一連の事件は大川戸の残した手記という作中作の形式で描かれ、動機も真相も表層では全てつじつまが合っているものの、その外側ではまだ説明の付けられていない疑問点が残され、途中に挟まれるいくつかの断章とも矛盾してしまう。
それらをまとめて解決する真相は、豪快なものの他に類例がいくつかあるトリックで、正直に言えば「またこれか」と思ってしまったのだが、本作の方が先であり、後発の某作よりも動機やこのトリックを隠蔽する手腕では優れていると言えよう。

余談だがその某作がいまいち好事家の間でさほど評価されなかったのは「模造殺人事件」が念頭にあったからだとようやく理解できた。解決シーンこそ明快かつ衝撃的で某作に軍配が上がるが、トリック丸かぶりで処理の上手さも劣ると来ては、そりゃ微妙な反応になるだろう。自分もこれを読んでしまうと某作の評価を1~2段階は下げたくもなる。作者は読んでなかったんだろうなあ。

本作の話に戻ると、真相は複雑な筋で偶然が重なりすぎたきらいもあるが、終わってみれば全てが腑に落ち、なんとも言えない苦い読後感を残す結末も良い。
またあからさまにスケキヨさんで言うまでもなく横溝リスペクトにもあふれているらしく、人物描写こそ無味乾燥なものの、隙あらば叙情的な雰囲気を醸し出そうとする筆は多少読者を選ぶかも知れないが、魅力的な設定に見合った豪快なトリックと、独特の空気感が両立した、絶版なのが実に惜しい隠れた良作である。


18.3.14
評価:★★★☆ 7
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今週のキン肉マン #238 土俵際の友情!!

2018年03月12日 | 今週のキン肉マン
・そのぶつかり方でちぎれるロープもろすぎない?
・土俵のような爪痕はウルフマンの勝ち名乗りのためにあったのか!
・伏線じゃなかったと思った数週間後に回収してくる今のゆでの恐ろしさ
・2018年にウルフマンの完全勝利が見られるなんてなあ……
・リング内で死ぬのは構わないけどね
・この偽善者どもめ! のフォントかわいい
・やはりオメガの民と地球にはカピラリア七光線が関係しているのか
・ルナイトの最後のセリフのポーラマン感
・熊と狼だしな
・落ちたくらいで死ぬだろうかと思ったらちょうどいいトゲが
・あったよちょうどいいトゲが! よしでかした!
・博物館の前になぜキン肉族幻の三大奥義がwwww
・完璧の塔に飾られてたり来歴をはっきりしてくれよ
・新幹線切って飾っちゃうのかよwww
・テリーマンのシューズはそれ呪いのアイテムだから
・ネプチューンマンのレッグウォーマーの適当感
・この博物館あったら絶対見に行く
・なんなら丸々一回この博物館の展示物を描いて欲しいわ
・そしてフェニックスだけじゃなくて4人来たーー!!!
・マリポーサ! ゼブラ! ビッグボディ!!
・ビッグボディなんて実質初試合みたいなもんだよ
・2018年にまたこいつらの試合を見られるなんて
・真ソルジャーがハブられたけど、あいつは残虐の神が離れたらそもそも射殺されてるからな
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ミステリ感想-『少女を殺す100の方法』白井智之

2018年03月10日 | ミステリ感想
~あらすじ~
「死んでる? 誰が?」「みんなです」

名門女子中学校である日、教室内で20人の生徒が死体で発見される。
教頭のクサカベは学校に都合よく真相を偽装するため、警察よりも先に犯人を捕らえようと目論む。
「少女教室」他4編収録。


~感想~
白井智之はやっぱり頭おかしいな! 短編でも完全に頭おかしいな!
これまで長編3作を発表しいずれもエログロ(※グロ八割)なSF設定ながら、論理と推理に彩られた一級の本格ミステリをものしてきた作者による初の短編集。
期待通りに短編でも論理の冴えはキレッキレで、長編と同じくエログロ(※グロ九割)かつ説明不要のSF的な特殊設定を活かした、他に無い個性が輝く。

冒頭の「少女教室」からして「バトル・ロワイアル」か「悪の教典」かというクラス丸ごと皆殺し事件を、些細な手掛かりから論理的に紐解いて見せ、さらに何捻りも加えるという年間ベスト級の代物。

続く「少女ミキサー」は「まず少女がミキサーに放り込まれます」という動機も世界観も何もかも放棄した特殊設定にもほどがある舞台なのに、殺人事件がやはり論理的に解かれてしまう。

「「少女」殺人事件」はアンフェアの謗りを受けた作家が、フェアプレイに徹して(?)書いた作中作が描かれるパロディミステリ。

「少女ビデオ 公開版」はSF設定は無いものの登場人物が全員はっちゃけており、5編中最もエログロ(※グロ五割)に特化しつつも意外性のある物語でぐいぐい読ませる。

そして掉尾を飾る「少女が街に降ってくる」はタイトル通りの現象が起こる村で、この設定から考えられる限りの発想の飛躍と意外性を突き詰め、同時にデビュー作も想起させるとにかく無茶苦茶な一編で、まるで長編を圧縮したような濃密さ。

白井智之が短編を書いたらどうなるか? という疑問にほぼ100%期待通りに応えてみせた満点回答の一冊で、短編集ながら今年の本ミスランクインも十分に狙えるのではなかろうか。


18.3.7
評価:★★★★ 8
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ミステリ感想-『化身』愛川晶

2018年03月07日 | ミステリ感想
~あらすじ~
両親を亡くし一人暮らしを送る大学1年の人見操の家に、保育園とインドの絵画の写真が届く。
先輩の「シェフ」こと坂崎英雄の助けを借り調べると、保育園では19年前に未解決の幼児誘拐事件が発生していた。
亡き両親は誘拐犯なのか? 調査を進める操の前に次々と過酷な現実が現れる。

1994年鮎川哲也賞、文春8位


~感想~
落語から幻想、果ては女性名義でラノベミステリまで手掛けた才人のデビュー作。
いかにも狙って新人賞を獲りに行った熱意の籠もった力作で、両親を誘拐犯ではと疑う冒頭のつかみから、調査のたびに浮かび上がる事実と謎、堅牢な密室と急展開、そして絶望的な真実に、戸籍制度の盲点を突いたトリックの光る結末と、本格ミステリに必要なものが勢揃い。
多少の不自然さは無視した作中人物による解説付きのフェアプレイも加え、どこまでも周到な作品である。

一方で戸籍制度の盲点は、盲点過ぎて探偵の気付きと読者の気付きがリンクすることはまずありえず、ドカベンの「ルールブックの盲点の1点」みたいな解決であり、密室はダミーの真相も含めて低調で、事件の結末は込み入った内容を説明するためとはいえ味気ない供述調書の形式と、作風自体はいたって地味なのが玉に瑕。
とはいえ終盤の怒濤の展開と大団円は、我々が本格ミステリに期待するものが全て詰まっている、と言っても過言ではない素晴らしいもので、読後感は抜群。
鮎川賞のみならず文春8位を射止めたのも納得の良作には違いないだろう。


18.3.6
評価:★★★☆ 7
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今週のキン肉マン #237 影なき土俵!!

2018年03月05日 | 今週のキン肉マン
・友情パワーを発動したルナイトの目がΩに!?
・じゃあスグルの目もKINにならなきゃおかしいよな
・掟破りの合掌捻りあんまり威力なさそう
・振り回してその場に叩きつけてるだけだもんな
・傘だ! 傘を持ってこい!
・清き心が発動条件なら悪魔将軍には発動できないだろしっかりしろミート
・捲土重来に他の連中も巻き込むカナディアンマン
・あきらめるな! のコマ汎用性高そう
・ウルフマン絶対勝利フラグ
・もろ差しからのがぶり寄りといつまでも相撲に付き合ってくれるルナイト
・まさかのウルフマンの落下激突技
・超人相撲ではこんな技が飛び出すのかよ…
・前回のルナイトがマットに爪で作った土俵が絡んでくるという予想完全に外れたな
・ウルフマンは負けるが土俵の外にルナイトが出ていたとかそんな予想がされてたけど
・ルナイトは顎が砕けてるし煽り文通りの物言いなしの決着だろう
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非ミステリ感想-『ジャパゥン』清涼院流水

2018年03月04日 | ミステリ感想
~あらすじ~
1563年、ポルトガルの宣教師ルイス・フロイスは日本に上陸し布教を開始する。
彼の記した「日本史」をあの清涼院流水が「大説」として再構成。


~感想~
ガチ歴史小説。流水が書いているというだけで胡散臭さを感じてしまうかもしれないが、心配無用。ルイス・フロイスの日本史を歴史小説、もとい歴史大説として再構成しようという高すぎる目標に、恐ろしいほどの努力と情熱を注ぎ込み真摯に取り組んでいる。
かの「コズミック・ゼロ」以来ミステリからは少し離れ、近年では他作家の作品を英訳したり、学習会を開いたりと英語分野で目覚ましい活躍をしていたらしいが、まさかこんなことになっていたとは。

だがあまりにガチすぎて1巻では肝心の織田信長が出てこないどころか、フロイス32年の日本滞在のうち2年足らずしか描けていないというガチ具合。
自分は戦国を愛しフロイスにも興味津々で、来日当初の知識もなく楽しく読めたが、信長登場後は歴史の流れをほぼ承知しており、この先も同様に楽しめるか否かは不安が残る。流水はあまり知られていない意外な事実として「信長は潔癖症で下戸」とか「秀吉は多指症」を挙げているが、それ戦国好きの間では常識だしな…。
2巻以降も読むことはないかもしれないが、流水の完遂すれば「偉業」と呼んで差し支えない取り組みには心からエールを送りたいと思う。


18.3.2
評価:★★☆ 5
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3月の新刊情報

2018年03月01日 | ミステリ界隈
1日 新潮文庫
浅暮三文 誘拐犯はカラスが知っている
伽古屋圭市 断片のアリス
島田荘司 ゴーグル男の怪
麻耶雄嵩 あぶない叔父さん

2日 角川書店
我孫子武丸 怪盗不思議紳士
深水黎一郎 虚像のアラベスク

6日 河出文庫
泡坂妻夫 迷蝶の島

7日 徳間文庫
柚月裕子 朽ちないサクラ

9日 光文社文庫
佐々木譲 屈折率

13日 講談社
中山七里 悪徳の輪舞曲

14日 光文社
長岡弘樹 にらみ
深木章子 消えた断章

15日 講談社文庫
竹本健治 涙香迷宮
三津田信三 誰かの家

22日 講談社
三浦明博 集団探偵

22日 創元推理文庫
米澤穂信 真実の10メートル手前

23日 角川書店
東野圭吾 魔力の胎動

28日 実業之日本社
倉知淳 豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件

29日 角川書店
近藤史恵 震える教室
麻耶雄嵩 友達以上探偵未満
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