東方のあけぼの

政治、経済、外交、社会現象に付いての観察

巣鴨拘置所の東条英機

2005-08-10 10:14:33 | 東条英機
自殺未遂の傷も癒え、東条英機は現在の池袋サンシャイン60
ビルが建っているところにあった巣鴨拘置所に収監された。
敗戦後巣鴨拘置所は連合軍に接収され日本のABC級戦犯四千
人が収容され六十人の死刑が執行された。通称巣鴨プリズンと
呼ばれた。

東条英機はその後、A級戦犯に対する極東軍事裁判で絞首刑を
宣告され、昭和二十三年十二月二十三日早朝刑を執行された。
連合軍は皇太子(平成天皇)誕生日を死刑執行の日に選んだと
言う。

ニュース映画に残っている東京裁判での東条他の態度は落ち着
いたもので、ニュールンベルグ裁判でナチス首脳たちが見せた
ような醜態と対照的であった。もっとも、右翼の思想家大川周
明が精神異常をきたして免訴になったという椿事があった
(詐病ともいわれる)。

巣鴨プリズンでも看守を困らせることもなく東条は模範囚であ
ったようだ。東京裁判での東条の宣誓供述書が最近注目されて
いる。第一級の歴史資料などというものもいるがどうだろう。
たしかに要領よくまとまっているが、内容のほとんどは、当時
の内外の新聞で確認できることか、これまでに歴史家が言及し
ていることばかりだ。さながら能吏の作文をみるが思いはする
が。

これこそが、東条が高級官僚として、能吏としての実態であろ
う。身柄を収監されてその行動にはオプションはない。逆に言
えば、色々と思い悩むストレスから開放された東条にとっては
生涯でもっとも平穏な時期ではなかったか。思想、行動の選
択肢がなければ、能吏は学校における優秀な学生の如く、先生
を感心させる模範解答を書ける。

倫理と言うものは思想、行動の自由があって、つまり右せんか
左せんかの選択があるときに問題になる。自由なきところに倫
理はない。東条は倫理の重圧から開放されたのである。

権力を持つ能吏が倫理的に欠陥がある場合は、現代においても
多いのである。軍事官僚が大蔵財務官僚、道路・建設官僚、自
治官僚そして郵政官僚などに代わっただけであり、彼らが自由
意志と強大な権力を持った場合、倫理的たりうることは現代で
もまれである。