大正から昭和へという時代は近代日本の転換点になった時期で間の悪いことがかさなった。特に軍部台頭、暴走につながった事象が連続した。
第一に軍縮をあげなければならない。日本政府は抜本的な軍縮を計画していた。軍縮そのものは世界の大勢となっており、その圧力もあった。
軍縮というのは、身もふたもない言い方をすれば職業軍人のリストラである。猛烈な反発が出る。現代でも同じだ。リストラと言うと労働組合がとたんに戦闘的になる。反抗的になる。相手が軍人となると更に危険となる。
国際的にも軍縮会議が連続して開かれ、ここで欧米から日本に要求された内容が例によって欧米のわがまま勝手な要求でこれが日本の世論や軍部を憤激させた。現在のTPP交渉でアメリカの滅茶苦茶な要求に農協が頑強に抵抗したような物である。
結果的にはこれが日本の軍縮反対派のゴールをアシストした。もっとも欧米が一枚上でそうなった上で、日本をのっぴきならない所に追い込む計画だったのかも知れない。すくなくとも、結果的にそうなった。
もっとも、この時点では日本の庶民は軍縮大賛成であった。町中で軍服を着た人間に出会うと「税金泥棒」と罵声を浴びせた。私の祖父は軍人だったが、外出する時には背広に着替えないと街を歩けなかったそうである。
軍隊内部での注目すべき変化は下級将校に瀰漫して来た下克上の危険な雰囲気である。これは大正デモクラシーの悪影響である。民主思想というのが危険思想であるというのはあながち間違いではない。515,226など下級将校の不満分子の跳ね上がりが頻発した。将校でも新聞は読む。週末には家に帰れば街に溢れかえった雑誌、新聞、小説でデモクラシーを謳歌している雰囲気に浸る。下克上当然の雰囲気となる。
さて、大陸では手を変え品を変えて抗日運動があり、日本人に対するテロが日常茶飯事である。それもあって、最終的には満州国建設に至る軍事的作戦が行われた。これが次々と成功すると、民衆は「税金泥棒」という罵声を浴びせることを止めて「兵隊さん、有り難う」の歓呼の渦が巻き起こった。
職業軍人が「これだな」と思わないわけがない。軍縮は豆腐のように叩き潰された。職業軍人は官僚である。士官学校卒業時の成績で一生は決まる。また陸軍大学、あるいは海軍大学に入学出来れば「上級公務員」として将軍への道が開ける。
それに上乗せ出来る道が軍事官僚には、他の分野の官僚とはことなり、あったのである。戦争で軍功を上げることである。軍人の大好物である勲章がもらえる。昇進にもはずみがつく。求めても戦陣へ赴くことを画策する。なければ作る場合もある。軍人にはゴールデン・エイジである。
新聞がこれをあおる、つまり『兵隊さん、有り難う』を連日連夜連呼する。そうすると、日本人のスポーツ選手が国際試合で勝った翌日のスポーツ紙のように売り上げ部数がどんどんあがるのである。マスコミに倫理観がないのは現代だけのことではない。昔からのことである。
それやこれやで、あなた、日本はリバー オブ・ノー・リターンを越えたのである。もはや元老という抑制装置はないのである。合掌。
時期をほぼ同じくして日露戦争勝利の要因だった日英軍事同盟が失効した。これについて書くべきだが2000字を超えそうなので次回に。
第一に軍縮をあげなければならない。日本政府は抜本的な軍縮を計画していた。軍縮そのものは世界の大勢となっており、その圧力もあった。
軍縮というのは、身もふたもない言い方をすれば職業軍人のリストラである。猛烈な反発が出る。現代でも同じだ。リストラと言うと労働組合がとたんに戦闘的になる。反抗的になる。相手が軍人となると更に危険となる。
国際的にも軍縮会議が連続して開かれ、ここで欧米から日本に要求された内容が例によって欧米のわがまま勝手な要求でこれが日本の世論や軍部を憤激させた。現在のTPP交渉でアメリカの滅茶苦茶な要求に農協が頑強に抵抗したような物である。
結果的にはこれが日本の軍縮反対派のゴールをアシストした。もっとも欧米が一枚上でそうなった上で、日本をのっぴきならない所に追い込む計画だったのかも知れない。すくなくとも、結果的にそうなった。
もっとも、この時点では日本の庶民は軍縮大賛成であった。町中で軍服を着た人間に出会うと「税金泥棒」と罵声を浴びせた。私の祖父は軍人だったが、外出する時には背広に着替えないと街を歩けなかったそうである。
軍隊内部での注目すべき変化は下級将校に瀰漫して来た下克上の危険な雰囲気である。これは大正デモクラシーの悪影響である。民主思想というのが危険思想であるというのはあながち間違いではない。515,226など下級将校の不満分子の跳ね上がりが頻発した。将校でも新聞は読む。週末には家に帰れば街に溢れかえった雑誌、新聞、小説でデモクラシーを謳歌している雰囲気に浸る。下克上当然の雰囲気となる。
さて、大陸では手を変え品を変えて抗日運動があり、日本人に対するテロが日常茶飯事である。それもあって、最終的には満州国建設に至る軍事的作戦が行われた。これが次々と成功すると、民衆は「税金泥棒」という罵声を浴びせることを止めて「兵隊さん、有り難う」の歓呼の渦が巻き起こった。
職業軍人が「これだな」と思わないわけがない。軍縮は豆腐のように叩き潰された。職業軍人は官僚である。士官学校卒業時の成績で一生は決まる。また陸軍大学、あるいは海軍大学に入学出来れば「上級公務員」として将軍への道が開ける。
それに上乗せ出来る道が軍事官僚には、他の分野の官僚とはことなり、あったのである。戦争で軍功を上げることである。軍人の大好物である勲章がもらえる。昇進にもはずみがつく。求めても戦陣へ赴くことを画策する。なければ作る場合もある。軍人にはゴールデン・エイジである。
新聞がこれをあおる、つまり『兵隊さん、有り難う』を連日連夜連呼する。そうすると、日本人のスポーツ選手が国際試合で勝った翌日のスポーツ紙のように売り上げ部数がどんどんあがるのである。マスコミに倫理観がないのは現代だけのことではない。昔からのことである。
それやこれやで、あなた、日本はリバー オブ・ノー・リターンを越えたのである。もはや元老という抑制装置はないのである。合掌。
時期をほぼ同じくして日露戦争勝利の要因だった日英軍事同盟が失効した。これについて書くべきだが2000字を超えそうなので次回に。