民主党の農家個別補償制度は現状の内容では、破綻することは目に見えている。この制度の基本的な考え方は、現行の農業災害保障法である。これは一般には農業共済制度として、農家に起きた災害を金銭で補償する制度である。
基本的には、戦後の食管制度によって支配されていたコメ作りの程制作であるが、その後様々な分野に広げられている。私は獣医師として、畜産農家の牛発生した障害(病気)を取り除き、生産の現場に戻すために”治療”をしていた。使用不能になると損害(廃用)に応じた金額が支払われる、保険制度でもなる。農家と国が掛け金を、品目(分野)に応じてふたんし合う制度である。
多分この制度ができた頃には、農家の規模も技術レベルも、あるいは勤勉さにおいてもそれほどの差違がなかった。お互いに助け合あう、互助の精神がしっかり残っていた。農産物の生産に他人より費用がかかるのは、納得できる理由が農家間に存在していた。
ところが、その後昭和36年の農業基本法の制定以後、農家には生産性と効率性が求められるようになってきた。農家には直接支払われる、こうした保障制度は極端に少なくなり、農地や灌漑のための整備などの基板整備ばかりが突出してくるのである。こうしたことを背景に、農家は効率を求めて規模拡大に走ったのである。
個別保障制度では、経費を多くかかったりは生産性が極端に落ちたりした、農家は補償の対象になるのである。簡単な話、さぼったり適材適所を押さえたりしない技術で生産した農家が、補償される事になりかねないのである。
現実に、現行の家畜共済では、家畜の看病や無理な生産を強要する農家ほど、共済制度の補償の対照になっているのである。共済制度は、幾ばくかの農家の負担があるがあり、高事故の農家や地域には負担が増えることになる。
個別補償制度の民主党案では、補償されるばかりで農家責任の存在や認定が難しい。勤勉な農家が馬鹿を見る精度になる可能性が大きい。農業に効率を最優先させた結果の農村に、この制度が定着するためには、その前にするべき事がある。