グーグルが中国から撤退した。中国は政治問題にしたくはないようだが、かなり不満を述べていた。自国の法律に従えと言うのであるが、これはチベット問題やウイグル問題それに台湾問題で述べる、国内問題だという論法そのままである。
ウイグル自治区で問題が起きたときに、取材記者が驚いたことがあった。広大な、ウイグル自治区の中で、インターネットが繋がっているところがホテルのプレスルームの一角に限定されていたことである。中国はインターネットを自在に統制しているのである。
グーグルの撤退理由のもっとも大きなことは、サイバー攻撃を受けたのであるがその発信元が中国政府の高官であったことである。グーグルが中国に進出するに当たって、天安門事件などの現政府にとって不都合なものは一切、検索不能を条件にしたがグーグルはこれを受け入れた。
中国はこれまで歴史上存在しなかった社会体制の建設を模索している。自らの国を途上国と位置づけ、社会主義を標榜し市場経済を導入した。その一方で、共産党一党独裁体制を堅持している。ソビエトをはじめとする、ヨーロッパの東側諸国が個人崇拝を育んだ長期政権体制を排除することで、命脈を保っている。
中国政府ののアキレス腱は、民主化と民族問題である。これらを押さえ込むには経済成長戦略と、情報の統制が欠かせない。とにかく裕になれば文句はでないものである。それでも、それがために本当のことを知りたい、自らの意見を政治に反映したいとなると、不都合な情報を国民の目から遠ざける必要があるのである。不都合なことを知ったがために、東欧諸国は崩壊した。
中国社会に新たな展開が訪れるとしたら、情報の公開とそれに伴う民主化の要求である。今のところそれらの動きが弱いのは、経済成長戦略が曲がりなりにも功を奏しているからである。環境問題の深刻さなども伴い、中国のバブルがはじけるのもどれほど遠くないものと思われる。