内閣府は、TPP参加による効果でGDPが3兆円押し上げられると査定した。日本はほとんどのTPP参加国あるいは参加予定国とすでに自由貿易協定を結んでいる。それらの協定の中で例外となっているのが、コメや砂糖など重要品目として農産物などを設けている。TPP加入によって大きく変化が起きるのは、交渉の過程で設けた重要品目の関税がなくなることである。
韓国の自動車や家電製品との競合の不利が取り上げられているが、韓国は多くの国々とFTAを結んでいる。韓国のGDPのうち輸出が占める割合が、60%を超えている。更には個別の交渉の前に、自国の農産物などを一旦手厚い保護を加えて後に交渉を行っている。韓国はTPPには加入しない。すでに個別の国々との交渉を積み上げてきているからである。
TPPに加わることによって、個別の国々と交わし積み上げてきた重要品目(例外製品)をなくすことになる。このことで、工業製品の輸出が有利になるほど、受け入れ側のアメリカやニュージーランドやオーストラリアの関税は高くはない。これらの国は元々低いのである。どれほどの経済効果があるかは、予測の範囲を出るわけでない。
食料や農産物の各国の様々な規制は、国によってかなり異なる。家畜を例に挙げると、日本では抗生物質の残留は全く認めていない。量規制はないのである。しかし、アメリカをはじめとする多くの国では、量規制を設けている。一定基準以下であれば許可されることが多い。これは検査はもとより、生産現場ではかなりの手間を食う作業になる。消費者には安全を提供している。これを、価格だけで評価される経済基準で見るのは明らかに不平等である。
食料や農産物の問題を、経済学者が価格だけで判断するのは、食料という商品の本質を削ぐことになる。ましてや政治家が自らの利権の範囲で、ポピュリズム的な発想と評価基準で判断することは許されるべきではない。
経済効果の試算には、GATA(Grobal Trade Analysis Project)モデルを用いて計算されるそうである。この計算方法の詳細については判断する力量は私にはないが、これまでも試算結果がかなり外れていることが指摘されている。今回の政府の予測も同様の結果になることになるだろう。同試算は農産物を価格評価だけで見ることになるが、食料の在り方や農村の現実を見ると極めて身勝手な試算であることは間違いないもと思われる。