北朝鮮による延坪島爆撃は許されざる蛮行である。とりわけ休戦協定以来民間住宅を無差別攻撃する。これはいかなる理由があっても許されるべきことではない。米韓の挑発行為があったとしても理由にならない。北はなぜこの時期にこのような蛮行をやったのだろうか。
多くのメディアは北朝鮮が、アメリカを交渉の場に引き出したいためとする論調が目立つ。しかし、直前にあった、アメリカの核専門家に軽水炉と2000基の遠心分離機のウラン濃縮施設を、わざわざ見せつけたことと関連している。慢性食糧不足の国で腹を突き出した将軍様が、二重あごの若き3男の肥満後継者への権力移譲を演出したと見るべきである。
83年にラングーンで全斗カン大統領暗殺未遂事件、といっても閣僚など21名が死亡した事件を想起する。金正日がこの事件をデビューにしたのであるが、飽き足らずに大韓航空機爆破までやってのけた。実績がないまま権力の座に就くには、軍事的手がらが手っ取り早い。穏健な経済発展などに取り組む間などないからである。北では、金正恩は軍事の天才だと報道している??何のことか良く解らない。
北朝鮮は、この事件で米韓の制裁を測ろうとしている。国内向けには主体思想を普及させ、我慢を強いている。多少の制裁には計算ずくであろう。中国は、アメリカにとって厄介な北朝鮮の存在は貴重である。口では困ったふりをしているが、国連の制裁行動はとることがないだろう。このところ親密になったロシアも同様の行動に出ることになるだろう。
北朝鮮の今回の爆撃は、人道的な問題はともかくとして、大国の動きを推し量るのに格好の指標となった。誰もが今以上の制裁などできないことが解ったからである。
北朝鮮は2012年に向けて、強盛大国を目指している。この年はアメリカ、韓国、ロシアの大統領選挙がおこなわれる。中国の国家主席が交代する年でもある。北朝鮮は、この年に顔ぶれがそろうまで、内容のある会議が出来ると思っていないため、6者協議など真剣に考えるわけがない。
北朝鮮への経済制裁も、中国が後ろ盾になったりロシアが支援している以上、限界がある。経済制裁以外の道も険しい。金体制の崩壊もどうやら当分はないようである。今回の北朝鮮のやりたい放題の蛮行は彼らの思惑通りになったと見るべきである。困ったものである。