降ってわいたようなTPPであるが、マスメディアはこぞって乗り遅れるとかいう評論家を連れてきて勝手なことをしゃべらせている。関税撤廃についても、価格のことしか触れない。報道は大きくTPP容認へと動き出しているといえる。世論操作は、懐具合を攻めればいとも簡単である。
当初、菅直人が言っていたのか「開国か鎖国か?」である。これはブッシュのテロの側かこちら側かという単純構造に類似する。あるいは小泉純一郎がしばしば見せた、単純化ロジックの提示にも酷似する。その後開国と農業再生と言い繕ってはいるけれど、唐突感は拭えない。
そもそも、菅直人の所属する党は民主党である。TPPを”民主”的手法で国民に提示したのであろうか?消費税も内部論議すらなく、党内でも異論が続出していたが、今回は更に輪をかけて、“非民主的”である。
関税撤廃でこの国がやって行くためには、相当この国の産業構造の転換に取り組まなければならない。たった1.5%ののGDPの老人集団と決めつけられた農業を、この国から排除するのであれば、全体の形をまず提示して選挙に勝つことが先であろう。「この国のかたち」を示すべきなのである。菅直人はそれに全く取り組んでいない。これからやるとのことらしい。来年の6月までのようである。そんな短期間で出来るのか?何処か普天間の論議に似てはいないか?
21世紀になって世界的に深刻な問題が数多く持ち上がっている。食料問題や環境問題に温暖化、それにこれらをさらに悪化させる格差問題が大きい。格差は、産業間格差、地域間格差、国家間格差など度あらゆる面で広がり、更にその格差は大きくなっているのである。関税撤廃、自由貿易はこれらの全てを悪化させることになる。新自由主義そのものである。TPP論議にこれらのことは、全く論議された形跡がない。
民主党の提案している、正確には小沢一郎一派が提案している農業者に対する戸別補償制度であるが、TPP論議と明らかに矛盾する。戸別補償制度は明らかに農産物価格を上昇させることになる。過剰コストを保障するからである。上昇価格分の何割かを国家が保障することになるのであるが、TPPは農産物にとって、価格を上げることになるはずがない。それとも、上昇価格に上乗せして関税分も国家が保障するというのだろうか?それをTPPは容認するのだろうか?
戸別補償の他に関税差額分も見るなら、毎年6兆円を超える農業予算が必要になるだろう。それを、関税撤廃で儲けた国が補填するというのだろうか?そんな論議もなく、経済界はTPP参加を主張している。
関税撤廃で農業者が大変だとか言われるが、大変なのは国民、消費者である。僅か5%の土地に住む80%の国民が、コンクリートとガラスと鉄と化学製品に囲まれて判断する経済論理はこの国を危くする。