今年7月に、牛の”レバ刺し”は決して食べないように、このブログで忠告した。http://blog.goo.ne.jp/okai1179/d/20110707
その心配が現実のものとなってしまった。肝臓内部組織から、出血性大腸菌O-157が検出されたのである。動物の内臓を、原始生で人は食べていたと、テレビのコメンテーターが知ったかぶりで、解説していた。
しかし、現代の家畜は全くこれと異なっている。正常で、屠場に搬入される肉牛の、半分以上の肝臓は廃棄されているのである。
大量の穀物を給与された、牛の第一胃はペラペラである。ホルモンで一胃は、ミノと呼ばれる、歯ごたえのある胃壁が特徴の臓器である。それが、草をほとんど与えずに急速に成長、肥育される牛の一胃は草の刺激がなく、ペラペラの薄いものになってしまう。
病理的にははっきりとしていないと思うが、こうした胃から病原菌が直接肝臓に入り込むのでないかと、推察されている。左の写真は、私が死亡獣処理所で撮った写真である。褐色のところが、肝臓の正常な組織である。
そこに右下に黄色い塊が、膿である。肝膿瘍と呼ばれるものである。この牛は、別の病気で死亡したのであるが、肝臓組織は見た目には正常である。見慣れた写真で、珍しくはない。
日本ではこの肝臓は廃棄される。膿の多くは、化膿桿菌である。一見正常でも、過酷な飼養環境と経済効率を強いられる牛たちの、肝臓はボロボロである。
春に起きた、レバ刺しの事件では5人も死亡し241人もの重症者を出している。政府の出した指導は、表面に火を通すことであった。私は、今回肝臓組織内から大腸菌が検出されていることもあり、前回も表面感染だけではなかったと私は推察している。
決して、肝臓に限らず家畜の内臓を、”生”で食べようなどとは思わないよう、現場で長年仕事してきた獣医師として、忠告するしだいである。