政界の動きが激しく、その陰に隠れた形になっているが、軍事評論家の男と外交官僚に、民主党がコケにされた。コケ(虚仮)とは仏教用語で、中身と外見が異なることである。そうした意味では、コケにされるには民主党政権は十分に資格があると言える。
一つは、野田が野党の自民党対策として、へなへなな田中直紀に代わって任命した、元軍人の森本防衛大臣である。
森本防衛大臣は22日、自民党の政権公約の、集団的自衛権の容認と国防軍への昇格に、賛意を表明したのである。野田は風前の灯であるとはいえ、与党民主党の党首であり首相である。その野田内閣の一閣僚が、野党の政権公約に理解を示したのである。
森本を知る人間は、彼が変質したとは思わない。以前からの自説を唱えたに過ぎない。野田はこれに反応していない。
もう一つが、佐々江駐米大使が着任早々ワシントンの記者会見で、TPP促進を述べたことである。野田は民主党のマニフェストに、TPP参加を書き込めないジレンマにある。
公認には強制すると言いながら、いざ実行するとなると与党内の反対意見に及び腰となった。野田のふらつきに対して、佐々江は何のためらいもなく、「参加しない選択はない、世界の流れである」と、堂々と言ったのである。
民主党政権は、もうすでにボロボロであるが、自らの外部招へいした閣僚と自らが任命した官僚に、コケにされたのである。ロクに反論もできずお咎めもない。民主党政権が、官僚に食い物にされてきた象徴的な出来事であるにもかかわらず、驚きも何もない現実である