解散をいつやるだの赤字国債が発行できないなどと、責任のなすり合いをやっている民主党と自民党である。こんなくだらない、低レベルの政治のやり取りの間に、我が国は核兵器の使用を認める態度を取っていたのである。
国連の軍縮会議にスイスやオーストリアなど34カ国が提案した、「核兵器の非合法化声明」に、世界唯一の被爆国の日本が先月署名を拒否していたのである。
広島の松井一実市長は外務省を訪れ、熟慮を要請した。これに対して榛葉外務副大臣は拒否をした。長崎市長は2度にわたり参加要請を促している。2市長の動きが微妙に異なるのもの問題であるが、民主党政権が核兵器の使用を認めたことに、大きな失望を持つのである。
日米の対等な関係を掲げて、政権交代を成し遂げた民主党である。数々のマニフェスト違反をやってきたが、それなりの理由があれば容認できることである。しかし、日米の対等な関係の構築は、民主党が徹底すればできたことである。
自民党が築いてきた、アメリカ従属主義は全く擬えてきたことは、もっと大きく重大なマニフェスト違反である。
自民党を追随して、アメリカの『核の傘』に依存するためには、核兵器が非人道的兵器であるとする国際法が出来ては困るのである。困るのはアメリカであるが、民主党はこの国が唯一の被爆国であることすら放棄し、核兵器の使用を間接的に容認したのである。
核兵器を国際法上違法とするために、その非人道性を最も訴えなければならない日本が拒否することで、提案の重みがすっかりなくなってしまう。
毎年広島や長崎で、核兵器の廃絶を訴える声明を出している歴代の首相は、虚言を公の場で吐いたことになる。日本の政治家には、高尚な目的や人道にかかわることを信念に掲げる人材がいなくなった。財政や経済という目の前の処理を、極めて短期的な視点でしか語ることが出来ない政治家ばかりになった。
NATOは核の傘で軍事力を内外の誇示している。そのNATOの中の、デンマークやノールウェーも34カ国の中に入っている。核の傘のために賛同できないという理由にするのは、アメリカ従属主義に染まった民主党の象徴的出来事である。
かつて小渕首相が、自民党ではあるがアメリカの要請を振り切って、対人地雷全面禁止条約(オタワ条約)賛成した経緯がある。やる気になればできることである。理念がなくアメリカの顔色を伺う一方で、政治ごっこにふける野田たち民主党の松下政経塾出身者たちである。