戦争に勝者はいないと言われるが、ロシア・ウクライナ戦争は少なくともロシアに勝利はもたらさないだろう。プーチンも勝利ラインをうんと下げ、今では東部二州の完全制圧としている。ウクライナはロシア軍の完全撤退とクリミアの奪還、それに賠償を掲げている。
この戦争の出口は和平派(独・仏・伊など)と、徹底的に叩き賠償をさせる強硬派(英国・ポーランド・バルト三国など)に分かれている。
もう一つの出口がプーチン政権の崩壊である。実際に政権内や一般国民などに不平の声が聞こえるようになってきている。それはロシア軍内でも起きているようであるし、指揮官が狙われているロシア軍内の指揮系統も、スムーズにいっていない。政権の崩壊、プーチンの失脚も現実的に起こりうる。その場合でも、戦後の混乱を危惧する和平派と、復活ないようにとする強硬派のせめぎあいあはあるだろう。
和平派には第一次世界大戦でドイツに過大な賠償金を求めた結果、ドイツに被害論が台頭しナチの台頭の原因になったという教訓がある。強硬派は、ロシアが再度周辺国を侵略しない教訓を植え付け、残しておきたいという思いが強い。
勝利ラインを下げたロシアは、東部二州に戦力を集中し今のところこれが功を奏しているといえる。しかしそれも、戦局を長引かせるだけでしかない。
EUが経済制裁の第6弾を出した。石油の船の輸入を禁じたのである。ロシア財政のほぼ半分はエネルギー権益で得られるもので、7.2兆円にもなっている。その半分がEUに向けた天然ガスであるが、これを背景にEUは動かないと読んだプーチンの誤算はさらに大きくなった。
戦局が長引くと経済制裁は大きく効いてくる。ゼレンスキーは経済制裁は目に見えないと、苛立つが半年もたてば相当な効果がみられることになる。ロシアは経済的にも国民心理的にも戦争の継続が困難になるだろう。
そこで上記の、3通りの出口(ロシアの敗北)のどれかが選択されることになるだろう。