時代は嘉永から安政の時代。
佐渡に生まれた伊之助という記憶力抜群の若者が江戸に出て、蘭学、蘭方医(正しくは、漢方医。幕府の医者なので蘭方は禁じられているから。内密に蘭方医学に関心がある)お屋敷に奉公に上がるところから始まります。
長編小説のまだ2冊目。伊之助や弟子になった先生良順個人を描こうとしているのではなく、読者は、彼らを通して、その時代の仕組みを教えてもらっている。
長崎出島の海軍伝習所に付随して医学伝習所がつくられ、若きオランダ人医師ポンペが赴任している。
安政年間にコレラが流行した際に、身分にかかわらず患者の診察にあたろうとする医師ポンペに対して、幕府の要請で招かれている立場だから、幕府関係者以外の患者の手当てをすることはまかりならぬ、というのです。
以下抜粋
幕藩体制は、この国の「皇帝」である将軍を頂点とし、いかに将軍に近く、いかに将軍に遠いかということで無数の身分差が精密につくられている。むろん、将軍を頂点とする遠近尺度は、大名と直参までである。それ以外は、たとえば大名の家来などは陪臣として将軍との遠近尺度のそとにある。まして百姓・町人にいたっては、統治さるべき階級というだけで、別世界といっていい。別世界は別世界で、法制化された無数の身分に細分化され、たがいに差別しあうことにより、専制下の「安定」を示している。
略
万人に差別意識を強固に持たせることによって徳川の体制は成立している。もし庶民が、差別などあるべきでないという思想を共有してしまえば、たちまち台地がゆらぎ、その上に載っかった積み木にすぎぬ徳川身分社会などは簡単にくずれてしまう。
略
医学は医学だけがやってくるのではなく、「君臣共治」とよばれているオランダの社会思想やヨーロッパの人権思想など、あらゆる非日本的な思想が付着してやってくるものらしい。
150年ほど前の日本という国の仕組みです。
がんじがらめの制度の中で、黒船来航に驚き、和親条約で港を開かざるを得なくなった頃。資料を基に描かれた人物群像に引き込まれます。であってよかった本です。私にとって。
戦後生まれで、自由平等、人権尊重、平和主義を掲げる憲法のもとで育ったので、それらが水や空気のようであり、基本だと思っていたけれど、そうではない世界があり、いやむしろ、そうでない世界のほうが、比較にならないほど長い歴史を持っているのだと思い知らされます。
そういう時代の人たちの日々を思いやったりしますが、きっと私の連想とはかけ離れているでしょうね。今の時代のほうが断然いい。ありがたい。せっかくよい時代に生きられたのだから、有益に全うしたいものです。
■ 欄外いいわけ
本(電子版)を読もうとしても、睡魔なのか、途切れ途切れで読んでいます。
面白いと私自身が反応しているのに。
原因は、早朝から、2~3時間庭にでているので、疲れなのでしょう。
でも、今の季節、庭は止まらないし、、、苦笑
佐渡に生まれた伊之助という記憶力抜群の若者が江戸に出て、蘭学、蘭方医(正しくは、漢方医。幕府の医者なので蘭方は禁じられているから。内密に蘭方医学に関心がある)お屋敷に奉公に上がるところから始まります。
長編小説のまだ2冊目。伊之助や弟子になった先生良順個人を描こうとしているのではなく、読者は、彼らを通して、その時代の仕組みを教えてもらっている。
長崎出島の海軍伝習所に付随して医学伝習所がつくられ、若きオランダ人医師ポンペが赴任している。
安政年間にコレラが流行した際に、身分にかかわらず患者の診察にあたろうとする医師ポンペに対して、幕府の要請で招かれている立場だから、幕府関係者以外の患者の手当てをすることはまかりならぬ、というのです。
以下抜粋
幕藩体制は、この国の「皇帝」である将軍を頂点とし、いかに将軍に近く、いかに将軍に遠いかということで無数の身分差が精密につくられている。むろん、将軍を頂点とする遠近尺度は、大名と直参までである。それ以外は、たとえば大名の家来などは陪臣として将軍との遠近尺度のそとにある。まして百姓・町人にいたっては、統治さるべき階級というだけで、別世界といっていい。別世界は別世界で、法制化された無数の身分に細分化され、たがいに差別しあうことにより、専制下の「安定」を示している。
略
万人に差別意識を強固に持たせることによって徳川の体制は成立している。もし庶民が、差別などあるべきでないという思想を共有してしまえば、たちまち台地がゆらぎ、その上に載っかった積み木にすぎぬ徳川身分社会などは簡単にくずれてしまう。
略
医学は医学だけがやってくるのではなく、「君臣共治」とよばれているオランダの社会思想やヨーロッパの人権思想など、あらゆる非日本的な思想が付着してやってくるものらしい。
150年ほど前の日本という国の仕組みです。
がんじがらめの制度の中で、黒船来航に驚き、和親条約で港を開かざるを得なくなった頃。資料を基に描かれた人物群像に引き込まれます。であってよかった本です。私にとって。
戦後生まれで、自由平等、人権尊重、平和主義を掲げる憲法のもとで育ったので、それらが水や空気のようであり、基本だと思っていたけれど、そうではない世界があり、いやむしろ、そうでない世界のほうが、比較にならないほど長い歴史を持っているのだと思い知らされます。
そういう時代の人たちの日々を思いやったりしますが、きっと私の連想とはかけ離れているでしょうね。今の時代のほうが断然いい。ありがたい。せっかくよい時代に生きられたのだから、有益に全うしたいものです。
■ 欄外いいわけ
本(電子版)を読もうとしても、睡魔なのか、途切れ途切れで読んでいます。
面白いと私自身が反応しているのに。
原因は、早朝から、2~3時間庭にでているので、疲れなのでしょう。
でも、今の季節、庭は止まらないし、、、苦笑