私は多なる一であり、一なる多である
このことばがベルグソンのなかに出てくる。「なる」を「即」と「誤読」すれば「多即一、一即多」であり、「多」を「色」と、「一」を「理(空)」読み替えれば「色即是空、空即是色」になるだろう。このとき「なる」は英語で言えば「be動詞」になるのかもしれないが、「なる」を「なす」、つまり「為す」あるいは「生す」と読み替えれば、それはすべて「私」という「肉体」によって誕生する世界になる。
私がベルグソンに親近感を覚えるのは、こういう「誤読」を誘ってくれるからである。ベルグソンのことばのどこかに、私が知らずになじんできた「東洋」のことばがある。
「多」を「色」と私は書き換えたが、これは「私が出会った、私以外の存在」であり、それは「意識が存在として分類しているもの」というものであり、「私(肉体)」を抜きにしては存在し得ない。意識は単独では存在せず、常に「肉体」とともにある。むしろ「肉体(いのち)」が理解しているものを「ことば」にしたものが「意識(知性)」である。
こんなことばもある。
直観は生命の方向に進み、知性は逆の方向に進む。
「直観は生命の方向に進む」とは、直観はいのちを維持・継続・持続させることを目指す、ということ。そのために「知性」をつかう。つまり、「知性は逆の方向に進む」とは、知性は「もの」の方に進むということ。「もの」を「無機物」と言いなおすと(ほんとうは有機物も含むのだが、とりあえず)、それは、人間は「もの」を解体し、別のもの(いままで存在しなかったもの)をつくるとき、そこには知性が働いているということである。簡単に言えば、鉄鉱石から鉄をつくり、その鉄から橋をつくる、ビルの骨組みをつくる、あるいはさまざまな機械をつくる。鉄鉱石を鉄鉱石ではなくしてしまう。そうすることで、「いのち」の維持・継続・持続をはかる。「生きやすく」する。
しかし、「人間」は解体できない。解体すると「殺人」である。鉄鉱石から、武器をつくり、戦争を有利に進めるということも、人間はしてしまうのだが、これは少し脇に置いておく。
実は、「殺人」以外の、「人間の解体」も、あるには、ある。「いのち」を「労働力」に解体し、「肉体」を拘束することができる。ひとつの方向に「限定」して動かすことができる。しかし、これもまた別の問題である。
ベルグソンが言っているのは、直観は持続を目指し、知性は切断を目指すということである。そして、その接点に「肉体」があると、私は考えている。「存在するのは肉体だけ」というのは、そういうことである。
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