詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(88)

2024-03-20 22:29:20 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「私は愛する名に生きた……」にも「再生」に通じる一行がある。

我が生命(いのち)尽きるとも変わらぬ海の轟きの中に。

 一行と書いたが、この一行は一連目の最後と最終連の最後にある。つまり、繰り返されている。だから二行ということもできるのだが。
 海の轟きは変わらない。だから、私はいのちが尽きても「再生する」と私は「誤読」するのである。そして、「我が生命」の「我が」とは「私」ひとりではなく、「我々」なのである。「我々」だからこそ、「私」はいつでも「我々」なかに「再生」する。「我々」とは「海の轟き」である。ギリシャは海と共にある国だ。ギリシャ人は海と共に生きている。
 ところで。
 この「再生」ということばを抱え込むこの三篇には、もうひとつ、共通するものがある。タイトルがいずれも書き出しの一行と重複する。ただし、本文に「……」はない。タイトルにだけ存在する。
 もしかすると、原文にはタイトルがないのかもしれない。「無題」の詩かもしれない。しかし、中井はそれを区別するために書き出しの一行をタイトルとし、そのあとに「……」を追加したのかもしれない。「……」を重複させることで、三篇をひとつの作品であると暗示しているのかもしれない。(タイトルに「……」がある作品はほかにもあるのだけれど。)
 それにしても、というのは奇妙な言い方になるが。
 このエリティスという詩人は、なんとギリシャ的なのだろうと思う。あらゆることばが、ギリシャ悲劇やプラトンの著作にあったような気がしてくる。私はギリシャを実際に知っているとは言えないけれど、どのことばからもギリシャの光、匂いが噴出してくる。
 

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こころは存在するか(27)

2024-03-20 22:24:27 | こころは存在するか

 「人間の存在は行為である」。これは和辻哲郎全集(9)に出てくることばだが、「論語」のなかに書かれていたとしても疑問に思わない。カントにしろハイデガーにしろ和辻にしろ、ひとは結局同じことを、それぞれのことば(孔子語、カント語、ハイデガー語、和辻語)で語る。
 これは、ふつうは「翻訳」というかもしれない。しかし、私は「誤読」と呼ぶ。違っているが、重なり合う。重なり合うが、ずれてしまう。ひとの肉体は、それぞれ「個別」だからである。「理念(イデア?)=精神」が「一致する」という考えに、私は与しない。「肉体は個別でも共通(一致する)精神、理念がある」とは、私は考えない。

 肉体と精神(こころ)を分けて考える必要はない。肉体と精神(こころ)--それがあると仮定して--は同じものである。肉体を、ときどきひとは「精神」と呼んだり「こころ」と呼んだりする。私は、それを「肉体」というひとつのことばのなかに統一する。
 そして「精神(こころ)」を「肉体」の用語(?)で言えば、それは「行為(する)」なのだと思う。

 

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Estoy Loco por España(番外篇437)Obra, Jesus Coyto Pablo

2024-03-20 18:10:11 | estoy loco por espana

Obra, Jesus Coyto Pablo


 El paisaje de la ciudad se superpone con el perfil del hombre. El perfil del hombre se superpone con el paisaje de la ciudad. ¿Cuál es el pasado (memoria) y cuál es el presente? Esta pregunta no tiene sentido. El tiempo que llamamos "el pasado" realmente no existe en ninguna parte. Porque el tiempo nunca pasa. Todas las memorias  siempre existen con el tiempo del "ahora". Se superponen y nunca abandonan el momento presente. Hemos vivido en "ahora", vivimos en "ahora" y viviremos en "ahora".
 Un recuerdo solitario, el hombre recuerda el día en que murió su caballo favorito mientras miraba el monumento. Si la memoria de ese caballo hubiera podido desaparecer en algún lugar con el paso del tiempo, el hombre no se sentiría triste. Sin embargo, cada vez que el hombre ve el monumento se pone triste. Se construyen nuevos edificios en la ciudad y su apariencia cambia, pero el tiempo no pasa.
 El hombre lo sabe. El caballo de ese monumento recuerda al hombre.  Cuando llueve, se lo puedeentender claramente cuando la luz se debilita.

 男の横顔に街の風景が重なる。街の風景のなかに男の横顔が重なる。どちらが過去(記憶)で、どちらが現在か。この問いには、意味はない。「過去」と呼ぶ時間は、ほんとうは、どこにも存在しない。時間は過ぎ去ったりしないからだ。どんな記憶も、いつも「いま」という時間といっしょにある。重なって、いまという瞬間から離れることはない。
 たとえば寂しかった記憶、モニュメントの馬を見ながら、昔飼っていた馬が死んだ日のことを男は思い出す。その馬の姿が、流れ去る時間とともに、どこかに消え去ってしまうなら、男は悲しくならないだろう。しかし、モニュメントを見るたびに男は悲しくなる。街には新しいビルが建ち、その姿は変わるけれど、時間は過ぎ去りはしない。
 男は知っている。あのモニュメントの馬は、男を覚えている。思い出している。雨が降ると、光が弱くなる時間になると、そのことが鮮明にわかる。

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