詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

西脇順三郎の一行(105 )

2014-03-03 06:00:00 | 西脇の一行
西脇順三郎の一行(105 )


「桃」

道玄坂にヒヤ麦のでるころに

 西脇の書き出しはどれも魅力的だ。この一行の「意味」は道玄坂にある店が冷や麦が料理として出すころに、ということだろう。「出す」ではなく「出る」というのは一般的かどうかわからないが、私は、おもしろいと思う。冷や麦が自分で出てくる感じが、「もの」が主役として動くところが印象的だ。
 一行の音も好きだ。冷や麦の出回ること、それはたいてい一緒である。道玄坂で出るなら、丸の内や八王子でも出るだろう。でも、そうなると、音が違ってくる。
 西脇は、ここでは単にある「季節」を記しているのではない。ある季節を書くと同時に、一行の音楽をつくっている。「どうげんざか」という濁音の多い音から、「ヒヤ」麦へと動くとき、その「ヒヤ」がとても美しい。

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